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Microsoft Azure(以下 Azure)は、2010年のサービス開始以来、年間20%以上の成長率を記録しています。この急成長の背景には、Microsoftとの強固なエンタープライズ顧客との関係や、Microsoft 365やDynamics 365などのサービスとのシームレスな統合が挙げられます。
その多機能性とスケーラビリティにより、ビジネスの成長とイノベーションを支える重要なクラウドサービスとして世界中で評価されており、2023年現在ではAWSのシェア32%に対して、Azureは23%のシェアとなり、AWSを猛追しています。
しかし、その料金体系や割引オプションは一見複雑に見え、理解するのが難しいとの声もあがっています。本記事「Azureの見積方法を解説!料金体系や割引オプションを理解しよう」では、Azureの料金体系を分かりやすく解説します。Azureの代表的なサービスの料金や、課金の仕組みやコスト最適化のヒントを詳しく説明します。
<Azureの基本はこちらの記事がおすすめです>
Azureの料金体系の理解
Azureの料金体系は「使った分だけ支払う」従量課金制を採用しており、利用したリソースの量や時間に応じて料金が発生します。
従量課金制のメリットは、大規模な初期投資をせずに、少額なコストで必要なリソースを柔軟に確保・利用できる点にあります。例えば、月末の業務ピーク時にはリソースを増やし、それ以外の期間は最小限のリソースで運用するといったことが可能です。
しかし、Azureの各サービスの料金単位や、利用時間の計算方法など、細かい部分を理解しておかないと、予期せぬ高額な請求が来る可能性も考えられます。(クラウド破産)そのため、Azureを利用する際は、公式の料金計算ツールを活用して、事前に料金のシミュレーションを行い、おおよそのコストを把握しておくことをおすすめします。
Azureには従量課金制以外にも、1年または3年の長期契約をすることで大幅な割引を受けられる「Azureリザーブド インスタンス」や、Azure内で使っていない余ってるリソースを使用することで割引を受けて仮想マシンを購入できる機能「Azure スポット仮想マシン」など、さまざまな料金(割引)プランが用意されています。これらのプランを組み合わせることで、Azureの利用コストを最適化することが可能です。
Azureを賢く活用するには各サービスの料金に加えて、これらの割引オプションも理解をしておきましょう。
また、BeeXが提供している「BeeXPlus for Azure」を活用することで、Azure環境下のシステム運用において、TCO削減やコストの最適化が可能です。
Azure見積参考/料金例(仮想マシン・ストレージ・ネットワーク・サポート)
Azureの料金は、使用するサービスやリソースの種類、時間、量によって異なります。例えば、Azure仮想マシン(VM)の料金は、選択したVMのタイプ、種類、実行時間、およびストレージ使用量に基づいて算出されます。ストレージやネットワークの料金は、保存データ量や送信データ量によって決まります。
※最新の費用は料金計算ツールでご確認ください。
この章では、Azure仮想マシン(VM)・ストレージ・ネットワーク・サポートについての料金について
解説をいたします。($表記にしております)
AWS経験者を対象者にAzureの概念理解を目的として、AWSのサービスや仕組みを元にAzureの類似または同等のサービス・仕組みの整理して比較をした資料もご用意しておりますので本記事と併せてお読みください。
Azure見積参考料金例(Azure仮想マシン)
Azure仮想マシン(VM)とは、Microsoftが提供しているクラウドサービスのAzure上で提供されている仮想マシンです。開発テスト向けのエントリーレベルの仮想マシンから、大量のワークロードにも使用できる仮想GPUに対応した仮想マシンまで提供しています。また、運用変更による仮想マシンのスケールアップやスペック変更も簡単に実施できます。
Azure仮想マシン(VM)には、実行するワークロードの種類に応じて、「汎用」「コンピューティング最適化」「メモリ最適化」「ストレージ最適化」「グラフィカル・プロセッシング・ユニット(GPU)」「ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)」といったタイプが用意されています。それぞれの最低利用料金と想定使用ケースは以下を参照ください。
VMのタイプ | 利用料金 | 想定使用ケース |
---|---|---|
汎用VM | $0.096/時間~ | CPUとメモリをバランスよく配置。中・低トラフィックのサーバー、データベース、テスト環境に適しています。 |
コンピューティング最適化 | $0.0846/時間~ | 強力なCPU機能を提供します。中トラフィックのサーバー、バッチ処理、ネットワークサービスに適しています。 |
メモリ最適化 | $0.126/時間~ | 大容量のRAMと高速なRAMハードウェアを提供します。インメモリ分析、キャッシュサービス、リレーショナルデータベースに適しています。 |
ストレージ最適化 | $0.624/時間~ | 高いストレージ・スループットとI/Oを提供します。データウェアハウス、ビッグデータ分析、トランザクションSQL/NoSQLデータベースに適しています。 |
GPU | $0.90/時間~ | 仮想マシンの一部としてGPUリソースを提供します。ディープラーニング、機械学習、ビデオ編集、グラフィックスレンダリングに適しています。 |
HPC | $0.796/時間~ | RDMAなどの高スループットネットワーキングをサポートし、高出力の分散CPUリソースを提供します。超並列HPCワークロードに適しています。 |
※上記の料金は、Linux仮想マシンの価格であり、変更される場合があります。
※最新の料金についての詳細は公式サイトにてご確認ください。
Azure見積参考料金例(Azure Blobストレージ)
Azure Blob ストレージは、拡張性、コスト効率、安全性の高いクラウドストレージサービスです。テキスト、画像、動画、バイナリデータなど、大量の非構造化データを保存・管理するために設計されています。
Azure Blog Storageの料金は、1ヶ月ごとの従量課金制で、ストレージコストとデータ転送等のコストにわかれます。
本記事では、ストレージコストの「ローカル冗長ストレージ(LRS)」と、可用性や持続性に優れた「ゾーン冗長ストレージ(ZRS)」の2つを紹介します。
冗長性 | 容量 | プレミアム | ホット | クール | コールド | アーカイブ |
---|---|---|---|---|---|---|
LRS | 最初の50TB/月 | 0.218$/GB | 0.02$/GB | 0.011$/GB | 0.0045$/GB | 0.002$/GB |
500TB以内/月 | 0.218$/GB | 0.0192$/GB | 0.011$/GB | 0.0045$/GB | 0.002$/GB | |
500TB以上/月 | 0.218$/GB | 0.0184$/GB | 0.011$/GB | 0.0045$/GB | 0.002$/GB | |
ZRS | 最初の50TB/月 | 0.289$/GB | 0.025$/GB | 0.0138$/GB | 0.005$/GB | - |
500TB以内/月 | 0.289$/GB | 0.02$/GB | 0.0138$/GB | 0.005$/GB | - | |
500TB以上/月 | 0.289$/GB | 0.023$/GB | 0.0138$/GB | 0.005$/GB | - |
※最新の料金についての詳細は公式サイトにてご確認ください。
Azure見積参考料金例(ネットワーク)
Azureはいくつかのタイプのネットワークサービスに課金します。ここでは、最も一般的に使用される3つを紹介します。
●Azure Virtual Network
- Azureクラウド内に隔離されたプライベートネットワークを作成できます。
- 最初の50の仮想ネットワークを無料で提供
- パブリックIPアドレスの料金は$0.0036/時間からです。
- Azureリージョン内のVNETピアリングは、インバウンド/アウトバウンドのデータ転送に1GBあたり0.01ドルかかります。
- 地域間のVNETピアリングは、米国、欧州、オーストラリアで1GBあたり0.035ドル、アジアで0.09ドル、南米とアフリカで0.044ドル。
●Azure VPNゲートウェイ
- オンプレミスのネットワークからAzureに接続可能
- 価格は100Mbpsで1時間0.04ドルから、最大10本のS2Sトンネルと最大128本のP2Sトンネルが利用可能です。
●Azure帯域幅
- Azureはインバウンドデータ転送に課金しない
- 送信データ転送は最初の5GB/月まで無料
- 5GB/月を超えると、1GBあたり0.087ドルから始まり、データ量に応じて減少し、150TBを超えると1GBあたり0.05ドルまで下がります。
Azure見積参考料金例(Azureサポート)
Azureを利用する上で発生する不明点やトラブルを解決する手段のひとつとして、「Azureサポート」が提供されています。利用するサポートの種類に応じて、異なるレベルのサポート窓口が設けられています。このサポートは、主に以下4つのランクに分かれています。
プラン | 月額料金 | サポート対象 |
---|---|---|
Basic | 無料 | Azure利用者すべて |
Developer | USD$29/1か月 | 試用および非運用環境時 |
Standard | USD$100/1か月 | 運用ワークロード環境時 |
Professional Direct | USD$1000/1か月 | ビジネス上重要な用途での利用時 |
各プランの主な特徴は以下となっています。
●Basicプラン
- すべてのAzure利用者が無料で利用可能。
- 基本的な操作方法や契約内容の問い合わせに対応。
- 個別のテクニカルサポートや通話サポートは提供されない。
●Developerプラン
- 試用や非運用環境を対象としたサポートで、月額29USドル。
- Basicの内容に加え、特定ソフトウェアの構成ガイダンスやメールでのテクニカルサポートが受けられる。
- 事業への影響が軽微な場合のみのサポートで、応答時間は8営業時間以内。
●Standardプラン
- 小規模な運用環境向けで、月額100USドル。
- 24時間365日のメール・電話サポートが特徴。
- 事業に部分的な影響がある場合の応答は4時間、大きな影響がある場合は1時間以内。
●Professional Directプラン
- ビジネスでの重要な利用を想定し、月額1,000USドル。
- Azure専門チームによる手厚いサポートが受けられる。
- 電話相談が無制限で、事業への影響に応じて1〜2時間以内の迅速な対応。
- Azureエキスパート主催のウェビナーへの参加も可能。
これらのサポートの中で最適なプランを選択することで、Azureの利用をより効果的かつ安心して行うことができます。
Azure見積は”料金計算ツールとTCO計算ツール”を活用
Azureの利用を検討する組織にとって、事前の料金の見積もりは非常に重要です。この見積もりを通じて、組織は料金を予算内に収める計画を立てることができます。Microsoftが提供する「Azure料金計算ツール」は、このニーズに応えるための強力なツールです。このツールを使用すると、ユーザーは以下のことができます。
- Azureでのデータとアプリケーションの料金を簡単に見積る
- Azure仮想マシン(VM)の様々な設定とタイプの価格を確認する
- メモリ、CPU、場所、ストレージ、使用時間などの要因を考慮して、正確な価格を計算する。
- 複数のAzureサービスを組み合わせたソリューション全体の見積もりを取得する。
これらの機能により、組織はAzureの利用計画をより効果的に策定することができます。
さらに、技術の運用コストを正確に見積もるためには、総所有コスト(TCO)の考慮が欠かせません。特に、オンプレミスと、例えばソフトウェアのライセンスやハードウェアのスケーリングコストなどを明らかにするため、TCO計算ツールが役立ちます。このツールは、Azureでの運用とオンプレミスでの運用のコストを比較することを目的として設計されており、組織はツールを使用して、運用コストの比較レポートを取得することができます。
Azureの見積算出に Azure料金計算ツールの使い方
Azure料金計算ツールにはWebブラウザからアクセスできます。
仮想マシン1台から計算することもでき、構築したい環境がすでにイメージできている場合はシナリオから複数システムをまとめて計算することも可能です。
今回は仮想マシン1台を立てることを想定してAzure料金計算ツール使って計算してみましょう。
今回費用を算出する仮想マシンのスペックと条件は以下とします。
リージョン | Japan West (西日本) |
OS | Linux |
TYPE | Cent OS |
レベル | 標準 |
インスタンスタイプ | A4 v2 |
台数 | 1 |
起動時間 | 1か月(31日) |
割引オプション | なし |
サポート | 不要 |
■STEP1:Azure料金計算ツールにアクセスをする
■STEP2:表示通貨の設定
ページ下部に表示する通貨の設定が行えます。デフォルトがドル表示になっていますので
必要に応じて円や使用する通貨に変更をしておきましょう。
■STEP3:仮想マシンを選択
■STEP4:必要な仮想マシンのスペックを選択
■STEP5:割引オプションの選択
Azureには従量課金制以外にも、1年または3年の長期契約をすることで大幅な割引を受けられる「リザーブド インスタンス」や、一定の利用量を保証することで割引を受けられる「コミットメントプラン」があり、これらの割引オプションを選択することでコストを抑えることが可能です。
※今回の例では割引オプションの選択はしていません。
■STEP6:Managed Disks、スナップショットの追加、ストレージトランザクション、帯域幅を選択
必要な項目を選択をしてください。
■STEP7:サポートを選択
必要なサポートを選択をしてください。
■STEP8:料金を確認する
すべての必要項目を入力すると、ページ最下部に月額料金の見積りが表示されます
■STEP9:見積を保存する
エクスポートボタンを押下すると、Excel形式で見積を取得することができます。
また、作成した見積を保存や共有をすることも可能です。(Maicrosoftアカウントでログインが必要です)
Azureとオンプレミス、AWS、GCP)の料金比較
Azureを利用する前にコストで比較検討されるのがオンプレミスの環境とAWS、Google Cloud Platform(GCP)といった他社クラウドです。諸条件や前提によってコストは費用が大きく変わるため、具体的な金額ではなく”コスト構造”に主眼を置き比較をしてみます。
Azureとオンプレミスのコスト構造は大きく違う
Azureとオンプレミスの料金構造は大きく異なります。オンプレミスの場合、初期投資が大きくなる傾向があります。これは、物理的なサーバー機器やネットワーク機器、冷却設備などの設備投資、そしてそれらを設置するためのスペースが必要となるからです。また、これらの設備を運用・保守するための人件費も忘れてはなりません。
一方、Azureは初期投資がほとんど不要で、利用した分だけを後払いで支払う従量課金制を採用しています。具体的な料金は、使用したサービスやその規模(例えば、仮想マシンのタイプや使用時間、ストレージ使用量など)によって変動します。
また、データ転送量によっても料金が発生します。Azureからインターネットへのデータ転送(ダウンロード)は有料で、大量のデータを頻繁にダウンロードするとデータ転送料金が高額になる可能性があります。
<オンプレとクラウド(Azure)のコスト構造比較>
項目 | コスト 区分 | コスト 項目 | オンプレ | クラウド |
1 | 初期費用 | ハードウェア 購入費用 | 必要 | 不要(クラウド利用料に含まれる) |
2 | OS費用 | 必要(既存ライセンス利用の 場合は不要) | 不要(クラウド利用料に含まれる) | |
3 | ミドルウェア費用 | 必要 | 必要 | |
4 | 設計・構築費用 | 必要(自社実施の場合) | 必要(自社実施の場合) | |
5 | ランニング | クラウド利用料 | 不要 | 必要 |
6 | ハードウェア 保守費用 | 必要 | 不要(クラウド利用料に含まれる) | |
7 | OS保守更新費用 | 必要 | 不要(クラウド利用料に含まれる) | |
8 | ミドルウェア 保守更新費用 | 必要 | 必要 | |
9 | データセンター 利用料 | 必要 | 不要(クラウド利用料に含まれる) | |
10 | ネットワーク 接続費用 | 必要 | 不要(クラウド利用料に含まれる) | |
11 | 電気代 | 必要 | 不要(クラウド利用料に含まれる) | |
12 | 運用・監視費用 | 必要 | 必要(自社運用部分のみ) | |
13 | セキュリティ | 必要 | 不要(クラウド利用料に含まれるが強化範囲拡張により必要) | |
14 | 機器障害対応 | 必要(物理故障や冗長化) | 不要(クラウド利用料に含まれる) |
上記表をみておわかりのように、オンプレミスとクラウドの最大の違いは、固定費と変動費の比率です。オンプレミスのシステムは固定費が高く、ハードウェア、ライセンス、設置場所、冷却、電力などの初期コストが必要です。これに加えて、継続的なメンテナンスやアップグレード、セキュリティの更新にもコストがかかります。このため、オンプレミスの設備は通常、購入後数年間は使用し続ける必要があります。
一方、Azureのようなクラウドサービスは、初期投資が少なく、ユーザーは実際に利用したリソースだけに対して課金されます。この変動費ベースのモデルは、ビジネスの需要に応じてスケールアップまたはスケールダウンする柔軟性を提供します。ただし、不意のトラフィックの増加やサービスの過剰使用には注意が必要で、これが原因で費用が急増する場合があります。(クラウド破産のリスク)
このようなクラウド特有のリスクはAzureの知見をもつパートナーのソリューションを活用することで最小限に抑えたり、回避をすることが可能です。
Azure、AWS、GCPのコスト比較
Microsoft Azure、AWS、Google Cloud Platform(GCP)の3つのクラウドサービスもそれぞれ料金構造が異なります。しかし、共通しているのは、すべてが従量課金制と事前の利用コミットによりディスカウントプランを用意している点です。
つまり、コスト構造に大きな違いがないため、どのベンダーを選ぶかは、自社のチーム、アプリケーション、ワークロードが何を必要とし、要件を十分に理解する必要があります。最近では、システムの適正やリスクヘッジを兼ねて、マルチクラウド環境で運用する企業も増加をしています。
※マルチクラウドに関するご相談なら「BeeX」へお任せください
先に書いたように具体的な料金は、使用したサービスやその規模、利用時間などによって変動します。例えば、Azureの仮想マシンやAWSのEC2、GCPのCompute Engineなどの仮想マシンサービスは、使用したインスタンスのタイプや時間によって料金が変わります。
また、ストレージサービス(AzureのBlob Storage、AWSのS3、GCPのCloud Storageなど)も、使用した容量によって料金が変わります。 それぞれのクラウドサービスには料金計算ツール(Azureの「料金計算ツール」、AWSの「Pricing Calculator」、GCPの「Google Cloud Pricing Calculator」など)が提供されており、これを利用することで、自社のシステムをクラウドに移行した場合の料金をあらかじめ試算することが可能です。
具体的なコストについては、以下のサイト(英語)で詳しく料金を比較していますので参考にしてみてはいかがでしょうか。
●CAST AI
Azure、AWS、Google Cloud Platformのクラウド価格を比較しており、汎用インスタンスとコンピューティングに最適化されたインスタンスについて、それぞれのクラウドサービスの1時間あたりのオンデマンド価格を比較しています。また、1年間の先行コミットメントによる割引価格の比較も提供しています。
●ベリティス
Azure、AWS、GCPの平均的なユーザーとして予想される金額を提示しています。
●Sherweb
Azure、AWS、GCPのクラウド価格比較を提示しています。各プラットフォームの独自の料金計算ツールの比較も提供しています。
<AWS料金についての記事も参考に>
Azure利用料金の変動性と為替リスク
Azureの料金はドルベースで決定されることが多いため、為替の影響を受けやすいです。円安の時期には、Azureの料金が高くなる可能性があります。
為替は常に変動し、その予測は困難です。円安・ドル高が進行すると、Azureの利用料金が上昇するリスクがあります。ある調査によると、AzureやAWS、GCPを利用する83.4%が為替リスクによるクラウド利用料金の上昇を感じ、クラウドのコストメリットを実感しにくくなっているとのデータもあります。
従量制料金による利用量の増加や為替リスクを抑えるには、不要なリソースの利用をやめるなど適切な運用とコスト管理が重要です。その結果、企業の状況や時期に応じて、ビジネスの成長とイノベーションを支えつつ、運用コストを最小限に抑えることが可能となります。
Azureコスト最適化 7つのヒント
Azureのコスト最適化を行う理由は過剰な支出を避け、投資の効果を最大化することが目的です。リソースを適切に管理と、Azureの無料枠や、割引オプションの活用がキーとなります。
テクノロジーやビジネスニーズは時間とともに変化するため、Azureコスト管理戦略も年々変化をするため、定期的な見直しと調整によるコスト最適化への対応が必要です。
本章では、Azureでコストを最適化する方法を紹介します。
1.無料枠の活用
Azureは、Azureアカウントを作成してから最初の12ヶ月間、以下のサービスを無料で利用することができます。(代表的な無料サービスを記載、最新情報はこちらをご確認ください。https://azure.microsoft.com/ja-jp/pricing/free-services)
※各サービスには利用制限があります。例えば、Windows仮想マシンを750時間まで利用
サービスタイプ | サービス名 |
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コンピューティング |
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ストレージ |
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データベース |
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AI ・アナリティクス |
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Azure をご利用のすべてのユーザに常時無料で提供されるものと、新規のお客様のみ 12 か月間無料で提供されるものがあります。
無料サービスに含まれていないサービスを利用したい場合や、無料枠のサービス制限を超過した場合に最初の請求書から差し引くことができる200ドルのクレジットが提供されています。
1年間の試用を経て、自社に必要な機能かどうかの見極めが行えることで無駄なコストを抑えることが可能となります。
2.不要なリソースを取り除く
Azureのコストが過剰になる最も一般的な原因の1つは、未使用のリソースの使用です。これらは、稼働しているが使用されていないリソースであり、価値を提供することなくコストを消費しています。これらのリソースを特定し、シャットダウンすることは、Azureコストの最適化に向けた重要なステップです。
Azure AdvisorやAzure Cost ManagementのようなAzureツールを使用して、アイドルまたは未使用のリソースを特定できます。
ストレージの料金は、指定したディスクサイズではなく、実際に保存されたデータ量を基準としています。Azureバックアップも同様に、バックアップデータの実際のサイズに基づいて課金されるため、古いバックアップや不要なデータは定期的に削除することでも、コストを節約できます。
なお、仮想マシンを停止するとコンピューティング費用(CPU/メモリ分) は発生しませんが、OSの停止(シャットダウンのみ) では、課金されるため注意が必要です。
3.割引オプションを利用する
AzureのリザーブドインスタンスとAzureスポット仮想マシンを利用することで大幅に利用料金を抑えることが可能です。
●Azureリザーブドインスタンス
Azureのリザーブドインスタンス(Reserved Instance) とは、特定のリージョンにおいて事前に1年または3年間の Azure仮想マシン の利用料金を先払いすることで、利用料金の割引が受けられます。通常の従量課金の料金と比較して最大 72% もの割引を受けることができます。
●Azureスポット仮想マシン
Azureスポット仮想マシン(Azure Spot Virtual Machines)は、Azureでその時点で利用されていない“余剰リソース”を使用することで割引を受けて仮想マシンを購入できる機能です。 割引率はAzure全体で使用しているリソース(SKU、リージョンによって変わる)が使われている需要によって変化します。
従量課金と比較して最大90%割引で購入が可能ですが、余剰リソースがなくなれば、短期間で中断される可能性があるため、中断に耐えられるワークロードにのみ適用するなど、注意が必要です。
4.Azure節約プランを利用する
AzureのリザーブドインスタンスとAzureスポット仮想マシンによる割引以外にも、Azureにはクラウドコストを節約するためのオプションがいくつか用意されています。
節約プランは、Azureのコンピューティングリソースの利用を事前コミットする代わりに安く利用することができるプランです。1年または3年の期間を選択することができます。リザーブドインスタンスと似ていますが、リザーブドインスタンスは購入時に対象の仮想マシンSKUやリージョンを選択する必要があるのに対し、節約プランはその制約がありません。制約がない分割引率はリザーブドインスタンスより下がります。
5.Azureハイブリッド特典を利用する
Azureハイブリッド特典は、すでにWindows ServerやSQL Serverのライセンスを持っていて、ローカルで使用している場合、それらのライセンスをクラウドに持ち込むことにより、Azure 上の仮想マシンやデータベースの課金に対して割引が適用できる仕組みです。
リザーブドインスタンスと組み合わせることができ、Azureハイブリッド特典により最大85%の割引が適用されます。
さらに、Windows ServerおよびMicrosoft SQL Serverの一部のバージョンをAzureに移行する場合、ライセンスを延長することなく、3年間無料でセキュリティアップデートを受けることもできます。
6.Azure Dev/Test 価格で利用する
Azureサービスを開発やテストの目的で利用する場合、特典としてWindowsの仮想マシンをLinuxの仮想マシンと同じ料金で実行することができます。これは、マイクロソフトのライセンスが基本的に無料で提供されるためです。さらに、Azure SQL Databaseの利用料は最大55%削減され、Logic Apps(クラウド上のBizTalkサーバー処理)の利用料も最大50%節約できます。
7.BeeXのサービス「BeeXPlus for Azure」を利用する
「BeeXPlus for Azure」はBeeXが提供するAzureソリューションの一つです。このサービスは、Azureのライセンス割引販売・アカウント発行・管理、テクニカルサポートのみならず、監視サービスやセキュリティサービスなど、クラウドを安心/安全に利用するサービスをパッケージ化して提供しています。
Azureのリソースの使用状況やコストのトレンドを可視化するダッシュボードを提供し、TCO削減やコストの最適化を実現します。
BeeXがAzureパートナーとして得意としていること
BeeXは、マイクロソフト認定のソリューションパートナー(インフラストラクチャーの認定パートナー)であり、SAP基幹システムや他システム基盤の移転先を様々な利点からAzureを検討している企業に対して、導入コンサルティング、システム構築からクラウドマイグレーション、運用代行まで一貫して対応を行うことが可能です。
Azure導入事例はこちらをご覧ください。
Azureをはじめとするクラウドサービスや、基幹システム・周辺システムに長年携わってきたエンジニアが多数在籍しており、導入コンサルティングからクラウド構築、クラウドマイグレーション、運用・保守を支援します。
<Azureへの移行についてはこちらの記事もご覧ください。>
Azureの見積方法を解説!料金体系や割引オプションを理解しよう まとめ
Microsoft Azureは、クラウドコンピューティング市場で急速に成長しているプラットフォームです。
ChatGPTを代表とするOpen AIとの連携も世界中から高い注目をされており、Azureの利用は今後ますます増加していくと予想されます。
また、Azureとオンプレを活用するハイブリッドクラウドに加えて、Azure・AWS・GCPを適材適所に利用をするマルチクラウド環境下で企業のシステムを運用する流れもあります。
Azureを含めてクラウドを適切にコントロールし、投資効果を最大化し、適切なコスト管理を実現することがますます企業の情報システム担当者に求められていくのではないでしょうか。
BeeXはマイクロソフト認定のソリューションパートナーです。SAPのAzure移行の事例をはじめ、Azureやマルチクラウドに関する技術力には定評があります。現在利用されているAzureやクラウドのコスト削減提案はもちろん、設計構築から運用・内製化までワンストップでお客さまをご支援いたします。
本記事と併せてAzureへの移行についてのポイントをまとめたホワイトペーパーもお読みいただくことでAzure活用の理解がより一層深まりますので、ぜひご一読ください。