京都と大阪を結ぶ京阪電気鉄道をはじめ、約50のグループ会社を統轄する京阪ホールディングス。かねてより同グループでは会計システムにSAP ERPを利用してきましたが、既存サーバーOSの保守切れを機に、インフラ基盤をアマゾン ウェブ サービス(AWS)に移行することを決断。そのパートナーとして、SAP ERPやAWS移行の実績、技術力などを総合的に評価し、BeeXを選定しました。BeeXをプライムベンダーとした移行プロジェクトは約7カ月で無事に終了。運用負荷が大幅に軽減されるとともに、経理業務が大きく効率化しました。
- 課題
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- 運用の属人化を解消したい
- 繁忙期でも快適に動作するパフォーマンスを求めたい
- 災害対策・BCP対策を実現したい
- 解決したこと
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- ハードウェアの更新や運用からの解放
- レポートの出力時間が短縮するなど、経理業務が効率化
- 障害退避の環境の確保、インフラ標準化および運用効率化を同時に実現
サーバーOSの保守切れを機に会計システムの新たなインフラを検討
「日本資本主義の父」と呼ばれた渋沢栄一を創立委員長に迎え、1906年11月に産声を上げた京阪電気鉄道。同社を礎とする京阪グループは現在約50のグループ会社で形成されており、運輸、不動産、流通、レジャー・サービスなど多岐にわたる事業を展開しています。近年はライフスタイルの創造にも力を入れており、2019年12月には京都・四条河原町に健康的で美しくクオリティの高い生活を実現し、循環型社会に寄与する「BIOSTYLE」を具現化した複合施設「GOOD NATURE STATION」をオープンさせました。
同グループが会計システムにSAP ERP(ECC6.0)を採用したのは2007年のことです。まずは中核企業である京阪電気鉄道が導入し、続いてバス、不動産、流通等のグループ会社に展開。現在はグループ共通会計システムとして、グループ43社の経理業務を支えています。その後、2012年にサーバーをリプレースしましたが、それから7年が経過しサーバーOSの保守期限が迫ってきたことから、同グループでは新たなインフラを検討することになりました。当時の課題についてIT事業部 リーダーの竹田和喜氏は「これまでは本社ビルのサーバールームにハードウェアを設置し、社内の要員を中心に運用を行ってきました。そのため属人化が進み、後継者の育成が課題となっていたのです。また、障害発生時もすべて社内で対応しなければならず、IT要員の負荷が増加していました」と説明します。
一方、経理部門ではグループ全体の会計を支えるシステムだけに、安定性を最優先で求めていました。この点について経営統括室 経理部(連結) 課長補佐の谷本遊紀氏は「会計システムには繁忙期でも快適に動作するパフォーマンスが必要と考えました。また、2018年6月に大阪府北部地震が発生し、さらに2018年9月には台風21号により関西地域にも大きな被害が出ました。これらの災害を受け、改めてBCP(事業継続計画)が重要な要件であると考えるようになりました」と語ります。
BeeXの熱意と知識を高く評価 知名度より実力を重視し採用を決定
京阪グループでは、これらの課題を解決すべく、新たなインフラ基盤にクラウドを採用することを決断しました。「クラウドで基幹システムを運用することは初めてだったため、経理部門からは不安の声が挙がりました。ただ、検討を進めるうちに金融機関などでも採用されていることなどがわかり、徐々に現場の抵抗感は薄れていきました」(谷本氏)
パートナーの選定においては10数社にRFIを送付。最終的に5社へRFPを送付し検討を重ねた結果、AWSへの移行を提案したBeeXを選定しました。その決め手は、BeeXがSAP ERPとAWSの双方に精通している点にあったと竹田氏は語ります。「AWSに詳しい会社やSAP ERPを得意とする会社はそれぞれありますが、双方に詳しい会社はほとんどありません。SAP ERPのAWS移行に特化したサービスを展開するBeeXならば、安心してSAP ERPのAWS化に取り組める、そう感じました」
プロジェクトは、2019年2月にキックオフ。インフラ基盤の設計・構築を経て、SAP ERPの開発機/検証機/本番機およびNonSAPシステムの環境を移行しました。2019年7月にリハーサルを実施し、ユーザーテストののち9月の3連休で本番環境に切り替えています。「移行作業には安全をとって3日間を確保しましたが、実質的には1日で済みました。残りの2日間は夜間ジョブの実行などをテストし、移行直後もトラブルなく使うことができました」(竹田氏)
プロジェクトには数多くの難所があったものの、BeeXの適切な支援もあり、どうにか乗り切ったといいます。「BeeXからのアドバイスを受けて、既存のデータベースに溜まっていた不要データを削除し、容量を1/3まで圧縮しました。これが結果的に移行時間の短縮につながったと思います。さらに、検証機を1台AWS上に追加し、実環境を想定した性能も確認できました」(竹田氏)
本プロジェクトでは、BeeXがプライムベンダーとしてインフラとSAPのBASIS層の移行を担当、これにSAPのアプリケーションの移行を担当したベンダー、京阪ホールディングス、京阪ビジネスマネジメントのIT部門と同じく経理部門のメンバーが一体となって作業を進めました。経営統括室 IT推進部 課長の佐田誠氏は「当グループとしてもかなり大規模なプロジェクトで不安もありましたが、BeeXからは各ポイントで『順調です』という言葉をいただき、作業を完了させることができました」と語ります。
京阪ホールディングス株式会社様のシステム構成概要図
運用負荷が軽減され、経理業務が効率化 システムの安定性も増す
SAP ERPがAWSへ移行したことで、運用管理と経理業務でそれぞれ効果が現れています。管理面では属人的な運用がなくなり、将来にわたって持続可能な環境が実現しました。「ハードウェアを持たなくなったことで、IT要員の負荷は軽減されました。また、インフラの障害対応もBeeXにアウトソーシングできたことで、こちらの負担も減っています」(佐田氏)
マネジメント 経理事業部 連結グループの菊池稔氏は「安定したバックアップの仕組みが用意され、障害退避の環境も確保されたおかげで、安心して日々の業務に従事できるようになりました」と感想を述べています。
コスト面でも、利用しないインスタンス(サーバー)をこまめに停止する運用を行うことで、当初の想定以上にコストが軽減したといいます。今後は定額割引のリザーブドインスタンスの活用も検討しながら、さらなるコスト軽減を進めていく考えです。
移行の経験を活かしクラウドシフトを推進
SAP ERPのAWS移行というプロジェクトを成し遂げたことにより、今回の経験をもとに他システムのクラウド移行も検討しています。その一例として京阪電気鉄道が利用している資材システムで、BeeXの支援を受けながらAWS上に新規導入しました。今後もクラウドシフトを推進していく方針とのことです。
SAP ERPについては、SAPが提供する継続的品質チェックおよび改善サービス(SAP EarlyWatchCheck)を活用したパフォーマンス強化やセキュリティ強化を進めていくことを検討しています。また、2025年のSAP ECC6.0の保守サポート切れに備え、次期システムを検討していく考えです。
今回、無事クラウド移行を成し遂げた京阪グループ。竹田氏は「今後もAWSのノウハウを蓄積しながら、DRの構築、運用の効率化、コストの最適化などに挑戦していきます」と将来を語ってくれました。
インタビューにご協力いただいた方々
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- 京阪ホールディングス株式会社 経営統括室 経理部(連結) 課長補佐
- 谷本 遊紀 氏
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- 株式会社京阪ビジネスマネジメント IT事業部 リーダー
- 竹田 和喜 氏
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- 京阪ホールディングス株式会社 経営統括室 IT推進部 (株式会社京阪ビジネスマネジメント IT事業部) 課長
- 佐田 誠 氏
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- 株式会社京阪ビジネスマネジメント 経理事業部 連結グループ
- 菊池 稔 氏
京阪ホールディングス株式会社
京阪グループの中核企業として、京阪電気鉄道、京阪電鉄不動産、京阪百貨店、ホテル京阪など約50のグループ会社を統轄する持株会社。「京阪グループは、人の暮らしに夢と希望と信頼のネットワークを築いて、快適な生活環境を創造し、社会に貢献します。」という経営理念の実現に向けて、2026年度までに取り組む長期経営戦略を定め、「沿線再耕」「観光共創」「共感コンテンツ創造」の3つの戦略を進めています。2019年1月には、同グループが培ってきたノウハウを結集し、サービスクオリティを高めた新ホテル「THE THOUSAND KYOTO」を京都駅前に開業。12月には、京都・四条河原町に新たな「食」「美」「宿泊」「体験」を提供する複合施設「GOOD NATURE STATION」を出店しています。
SAP は、ドイツおよびその他の国々におけるSAP SEの登録商標です。
アマゾン ウェブ サービスおよびAWSは、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
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