株式会社近鉄百貨店

AWS

ECC 6.0をAWS上に異機種間移行しEhPを適用。わずか1.5日のダウンタイムで移行完了、安定稼働を実現

業種
小売
従業員数
1000人以上

ECC 6.0をAWS上に異機種間移行しEhPを適用。わずか1.5日のダウンタイムで移行完了、安定稼働を実現

日本最大級の百貨店「あべのハルカス近鉄本店」の運営などで知られる近鉄百貨店。同社は長年にわたって会計システムに「SAP ERP」を利用してきましたが、ハードウェアの老朽化とECC 6.0のサポート終了という2つの問題への対応を迫られていました。そこで、同社は2022年よりアマゾンウェブサービス(AWS)上にECC 6.0を移行し、Enhancement Package(EhP)を適用するプロジェクトをスタート。そのパートナーにBeeXを指名しました。この移行では異機種間移行が行われましたが、BeeXの提案によりOracle XTTS 方式を活用。わずか1.5日というダウンタイムで移行を完了させ、その後も安定した稼働を実現しています。

課題
  1. 10年以上にわたって運用してきた会計システム(SAP ERP)のサーバーが老朽化
  2. SAP ERP(ECC 6.0)にはEhPを適応していないため、2025年にサポート終了
  3. クラウドへ移行することでサーバーの運用にかかる負荷を軽減したい
解決したこと
  1. Oracle XTTS方式の活用により、最小限のダウンタイムで異機種間移行を実現
  2. ECC 6.0をAWS上に移行し、EhP8を適用したことで2030年までの利用が可能に
  3. AWSへの移行で運用にかかる負荷が軽減、MSPサービスの導入によりいざというときも安心

ハードウェアの老朽化に加え、“2025年問題”によるサポート終了が迫るAWS移行とEhP適用により抜本的な対応を目指す

関西を代表する百貨店のひとつ、近鉄百貨店。地域密着型で特徴ある店づくりを強みとする同社は、国内最大規模を誇る「あべのハルカス近鉄本店」をはじめとした10店舗の直営店に加え、Hoopなど3つの商業施設を運営しています。また、近年はFC(フランチャイズ)事業や生産事業など、新しい事業にも積極的に注力しています。この点について、執行役員で総合企画本部長を務める清水一広氏は「FC事業はコンビニ、ベーカリー、グロサリー・日配品、雑貨、フィットネス、ドラッグストア、レストランなど50業種へと拡大しており、社員がその店舗運営を行っています。また、当社はESGへの取り組みとして『地域に寄り添い、地域と活きる』を掲げているのですが、その一環として2023年から直営農場『はるちかファーム』においてイチゴやマンゴーを栽培。同社の店舗で販売し、お客様からもご好評いただいております」と説明します。

同社は、SAP ERP 6.0(ECC 6.0)を会計システムとして導入。以来、オンプレミス環境で10年以上にわたって利用してきました。しかし、このECC 6.0を稼働させていたサーバーのハードウェアが老朽化。加えて、いわゆるSAP ERPの“2025年問題”によるサポート終了の時期が近づいてきたため、抜本的な対応を迫られることになりました。総合企画本部DX推進部 課長の入谷健介氏は「ECC 6.0も、EhP6以上を適用すれば2030年までサポートを受けることができます。しかし、当社ではこれまでEhPを適用せずに利用してきたことから、サポート要件を満たしていなかったのです」と当時を振り返ります。

2025年問題への対応としては、いくつかの選択肢があります。第一に挙げられるのがSAP S/4HANAへの移行ですが、SAP S/4HANAへの移行はプロジェクト期間が長くなり、それに伴うコストも高額となるため、現時点の移行先の選択肢からは外しました。また、別の会計システムにリプレースするという方法も検討しましたが、画面や操作が一から変わることになり、ユーザーの使い勝手などを考えると現実的ではありませんでした。

そこで同社が選択したのが、クラウド環境に現行のECC 6.0を移行した上で、EhPを適用するという方法でした。
「これなら、延長サポートを受けることができるようになる上、サーバーの運用にまつわる負荷も軽減できます」(入谷氏)

従来、同社では主要な業務系システムをデータセンター(DC)のオンプレミス環境で運用していましたが、DC自体のサポート終了が控えていたことから、全社的にシステムのクラウド移行を進めているところでした。この件については、近鉄グループの情報システム系企業である近鉄情報システム(KIS)が先行して手掛けており、2023年にはグループウェア用サーバーのAWS移行を実施しています。この実績に加え、KISがAWSのサービスパートナーでもあることから、ECC 6.0についてもAWSの利用を前提とした移行を検討することになりました。

「Oracle XTTS」方式の採用で、移行に伴う作業を効率化システムのダウンタイムを最小限に

2022年、近鉄百貨店はAWS移行について、これまでECC 6.0の運用を担ってきた既存ベンダーのほか、BeeXを含む複数社に声を掛けて提案を募りました。

「KISの担当者がBeeXによるSAP ERPのAWS移行事例を見たことがきっかけで、その存在を知りました。クラウドに特化したプロ集団であり、特に大手企業の基幹系システムのクラウド移行を数多く手掛けていること、さらに小回りの利くことに魅力を感じました」(入谷氏)

同社が各ベンダーの提案を比較検討する上で、特に重視したのは、移行に伴うシステムのダウンタイムでした。百貨店は業種の特性上、年末年始などの繁忙期にシステム停止を行うことができません。そのため、閑散期に最小限のダウンタイムで移行を実施できることが必須でした。

今回の移行は、これまでECC 6.0とそのデータベース(DB)であるOracle DBが稼働していたAIXサーバーからOracle Linuxへ移行する異機種間移行になりますが、ここで問題となるのがエンディアンの変換です。エンディアンとは、データをメモリ上に展開する際の並び順で、AIXはビッグエンディアン、Linuxはリトルエンディアンと異なる規則を使用しています。よって移行の際には変換が必要になるのですが、その作業は負荷が大きく、DBのサイズやシステム間のデータ転送速度などの影響も受けるため、長くなりがちです。

「この問題を解決するため、BeeXが提案してくれたのが『Oracle XTTS( Cross Platform Transportable Tablespaces)方式』を活用した移行でした。この方式はエンディアン変換を行いながら、移行先環境へ事前にデータをリストア(Oracle Recovery Manager=RMANを使用)することで、システムのダウンタイムを最小限に抑えることができます。この方式の採用により、BeeXは、他社の提案と比較して圧倒的に短い1.5日間のダウンタイムでの移行を提案しました」(入谷氏)

2023年2月、同社はBeeXの提案を採用。移行プロジェクトのパートナーに指名しました。

プロジェクトのコストは当初想定の4割。 1.5日という短いダウンタイムで移行を実現

今回のプロジェクトでは、BeeXは技術的基盤であるSAP BASISのみを担当し、他のベンダーがアプリケーション部分を担当。合計7社が参加する合同プロジェクトとなりました。
「参加した会社の数は多かったのですが、プロジェクトのコストは当初想定の4割で済みました」(入谷氏)

Oracle XTTS方式を活用した移行は、BeeXにとっても初の試みであったため、時間をかけて準備しました。ダウンタイムの実測など本番機の移行について検証し、移行に向けたタスク精査、スケジュール調整を行ったのち、2023年11月から本格的な移行作業を開始しました。移行リハーサルと運用テストを繰り返し実施した後、最終的に2024年8月11日と12日の2日間で移行を実施し、13日にはAWS上での本番環境の運用を開始しました。

「三連休という限られた時間内での移行作業でしたが、計画通りに完了することができました。スケジュール上、35時間のダウンタイムを想定していましたが、これはアプリケーションの動作確認を含めた時間であり、BeeXのBASIS作業自体は実際には24時間程度で完了しました。移行中にテスト環境では発生しなかったトラブルも発生しましたが、BeeXの担当者に迅速に対応していただき、問題なく完了しました。移行後も安定稼働が続いています」(入谷氏)」

なお、近鉄百貨店ではBeeXと運用サービス(MSPサービス)も契約していますが、「今のところBASIS関連の大きな不具合は発生していないのですが、何か質問したときのレスポンスは迅速ですし、いざという時にスペシャリストが対応してくれるという安心感は大きいと感じます」と入谷氏は語ります。

ECC 6.0の延命により、今後の会計システムを検討する時間を確保社内の技術力やノウハウの蓄積にも貢献

ECC 6.0がAWSに移行し、EhPも適用できたことで、2030年まで利用し続けることが可能となりました。これにより、近鉄百貨店は今後の会計システムをどうしていくか検討する時間を確保することができました。「サーバーの運用にかかる負荷が削減されたのもメリットです。他のシステムについてもAWSへの移行を考えていますので、これからもBeeXにはお世話になることがあると思います」(入谷氏)

現在、同社では情報システムの構築や運用について主導権を持って対応できるよう、技術力やノウハウの向上、人材の確保や育成に取り組んでいますが、その点でも今回のプロジェクトの意義は大きかったといいます。
「将来的には自社システムはもちろん、百貨店グループ各社に向けたITサービスの提供も視野に入れています。その意味でも今回、高い技術力と豊富な実績・ノウハウを持つBeeXと組み、多くのことを学べたのは貴重な経験でした」(清水氏)

インタビューにご協力いただいた方々

  • 総合企画本部長 執行役員
    清水 一広 氏
  • 総合企画本部 DX推進部 課長
    入谷 健介 氏

株式会社近鉄百貨店

1934年の創業以来、小売業を通して地域社会の発展に貢献することを目指し、さまざまな事業活動を行ってきました。現在は、あべのハルカス近鉄本店をはじめとした10の直営店、Hoopなど3つの商業施設を運営しているほか、フランチャイズ事業の強化や、農業生産事業など新しい事業にも積極果敢に挑戦。2021年度からの中期経営計画においては、お客様の暮らしの変化に寄り添い、「百の貨」ではなく、新しい価値「百の価」を提供する、「百価店」の確立を目指した取り組みを進めています。

SAP は、ドイツおよびその他の国々におけるSAP SEの登録商標です。

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アマゾン ウェブ サービスおよびAWSは、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。

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