新聞を中核に、出版、放送、電子メディア、データベースサービス、経済・文化事業など幅広い事業を展開する日本経済新聞社。同社は顧客の業務システムと連携し、ニーズに合わせて日経グループが保有するコンテンツやデータを提供するAPI基盤のリニューアルにあたり、インフラ構築やバックエンド開発のパートナーに、同社の既存サービスにおいて豊富な開発実績を持つBeeXを選定しました。このプロジェクトではBeeXの伴走支援のもと、API基盤の構築からスタートし、最終的に50本以上のAPIを開発。「日経APIソリューションズ」として、その後も安定した稼働を実現しています。
- 課題
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- BtoB向けAPI基盤をリニューアルしたい
- インフラ設計とバックエンド構築をユーザー目線で支援してくれるパートナーが必要
- サービスの改善サイクルを高速化するため、開発・運用における自動化を徹底したい
- 解決したこと
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- スモールスタートで新API基盤を構築し、50本以上のAPIを開発
- 顧客ニーズからAPI化への要件を整理し、設計から開発、実装までを伴走支援
- IaC、CI/CD、運用監視の自動化でAWS上での開発・運用のメンテナンスフリーを実現
近年の顧客ニーズの多様化を受け独立したAPIサービスとしてリニューアル
近年、BtoBサービスに注力している日本経済新聞社。その代表的なサービスのひとつが、日経グループが保有するコンテンツやデータを顧客の業務に合わせて提供する「日経APIソリューションズ」です。提供する情報は新聞やニュース記事、人事情報、マーケット情報、企業情報、業界情報など、多岐にわたります。このサービスを導入した企業は、自社の顧客管理システムや電子申請システム、分析システムなどの業務システムとインターネットを介してシームレスに連携しながら、必要なタイミングでアクセスすることができます。サービスの特徴について、日本経済新聞社 情報サービスユニットプロダクトマネージャーの中尾理恵氏は「例えば、営業活動に必要な企業情報や人事情報をお客様の顧客管理システム上で確認できるようにすることで、業務の効率化を図ることができます。また、最新の経済ニュースなど、社内の各部門が欲しい情報を社内イントラで提供することで、事業活動を支援することも可能です。現在、本サービスは大手企業を中心に、さまざまな業種の各事業部門でご利用いただいています」と説明します。
同サービスは当初、日本経済新聞のプロダクトの一機能として提供されていました。しかし近年の顧客ニーズの多様化を受けて、独立したAPIサービスとしてリニューアルすることを決断。2020年ごろからサービ構築の検討を開始しました。「データだけを純粋に使いたい、自社システムと連携して使いたいといったお客様が増えていたのですが、既存のAPI基盤のアーキテクチャは柔軟性に欠けていたため、多様化するニーズに応えるのが困難でした。そこで、技術の変化にも対応できる最新のアーキテクチャで再構築し、新たに独立したAPIサービスとして提供することにしたのです」(中尾氏)
AWSに関する知識と日経の開発全般への理解度を評価しBeeXをパートナーに選定
日本経済新聞社は新サービスをアマゾン ウェブ サービス(AWS)上に構築することを決め、インフラの設計・構築とバックエンドの開発を支援するパートナーにBeeXを選定しました。その決め手は、AWSに関する知識の深さ、および同社の開発全般への理解度の高さにあったといいます。「BeeXにはこれまで、日経グループのネットサービスを利用する際に必要な顧客管理基盤『日経ID』、日経IDの各機能とWebサービスをつなぐAPI基盤『MGW』、取引先に潜むコンプライアンスリスクを特定・監視するBtoBサービス『日経リスク&コンプライアンス』の開発で協力いただいてきました※。特に、日経リスク&コンプライアンスは私たちと同じグループが担当している案件でしたので、その実力は十分に知っていました」(中尾氏)
※ MGW や日経リスク&コンプライアンスの開発事例 https://www.beex-inc.com/case/nikkei
基本設計や詳細設計、インフラ構築、バックエンド開発など要件に合わせてBeeXがさまざまな支援を実施
日本経済新聞社は、2020年11月にプロジェクトをキックオフ。12月に開発環境、2022年に本番環境の整備を終え、スモールスタートから順次連携するコンテンツを拡大していきました。BeeXは基本設計と詳細設計を担当し、策定された要件に合わせて設計や実装に落とし込んでいきました。アーキテクチャについては、日経リスク&コンプライアンスの一部をベースに設計し、サービス独自の要素を追加しながらAPI開発を進めていきました。「BeeXには商談に応じて開発を依頼するケースが多く、その際にはお客様の求める要件を伺いつつ、設計と構築を並行して進めました。リクエストに対してどういったレスポンスを返すと使いやすいかなど、検討を重ねながらの開発となったのですが、BeeXには要件の変更についても柔軟に対応いただきました」(中尾氏)
また、API基盤はさまざまなユースケースに対応できるように構築。汎用性を意識しながらエンハンス開発を続けました。この点について日本経済新聞社 情報サービスユニットの大塚恭平氏は「API基盤に関しては、将来を見越して構築に『Amazon API Gateway』と『AWS Lambda オーソライザー』を使用し、汎用性を持たせています」と語ります。
さらに、API開発をより効率化するため、AWS環境をソースコードとして管理する「Terraform」を活用してInfrastructure as Code化し、インフラ構築を自動化しました。「インフラをコードで記述・管理することで属人化を防ぐのと同時に、チーム内でレビューしながら環境を構築することが可能になりました。結果、インフラの非機能要件を満たしつつ、短期間でインフラ環境の準備やアプリケーション開発、サービスのデプロイを実現することができました」(大塚氏)
なお、サービスの公開にあたっては、高い安全性を担保するため、通常の自社による脆弱性診断に加え、BeeXの提供する脆弱性診断サービス「BeeX Inspection」も活用しています。
運用については、「Datadog」を活用してAWSのリソースやアプリケーションのパフォーマンスを監視する環境を構築。「Sentry」によるアプリケーションエラー検出や、「PagerDuty」によるインシデント管理を実現し、これらはすべて「Slack」に連携しています。また新規参入者や保守のために、ドキュメント類も充実させました。
IaC、CI/CD、運用監視の自動化などにより運用の効率化とコスト低減を目指す
日本経済新聞社は今回のプロジェクトにおいてアジャイル開発を採用。週1回のスプリントで毎月1回、本番環境をリリースしていきました。同社とBeeXのコミュニケーションについては、ビジネスチャットの「Slack」やタスク管理ツールの「Trello」、ドキュメントツールの「Notion」などを活用しています。
プロジェクトは順調に進み、最終的に50本以上のAPIを開発し、現在は運用フェーズに移行しており、安定した稼働が実現しています。「Terraformを使ってAWS上にシステムを構築したことで、アプリケーションとインフラの壁をなくし、効率の良い開発を実現することができました。システムはサーバーレスで構築しているため運用しやすく、CI/CDについても『GitHub Actions』を活用してデプロイの自動化を実現。ブルーグリーン・デプロイメントで不具合があった場合は、瞬時に切り戻しできるようにしています。さらに、運用監視についても自動化し、改善サイクルを高速化しました。このように、AWS上でメンテナンスフリーを実現することで、運用コストの低減も図っています」(大塚氏)
顧客のニーズや時代の変化に合わせてサービスを改善。 BeeXには引き続き伴走型支援を期待
日本経済新聞社は今後、顧客のニーズに応じて提供するデータを追加したり、時代の変化に合わせてコンテンツの提供方法を進化させたりしていく方針です。「最近では、企業からの関心の高いESG関連のデータを追加し、APIとしてデータが提供できる環境を開発しました。今後、人事情報などのデータ活用を希望されるお客様からの要望も反映すべく、コンテンツの改善と共に新たな提供の仕方を模索していきます」(中尾氏)
BeeXに対しては、これまでの伴走型の支援を評価し、今後の開発支援についても期待を寄せています。「日々の打ち合わせの中、BeeXのエンジニアにはお客様の目線に立って一緒に考えていただき、それがプロジェクトの成功につながりました。コンテンツに関しても、実際に中身を見ながらノウハウを蓄積してもらい、エンハンス開発の際はデータ活用に関するアドバイスをいただきました。今後も引き続き、日経プロダクトへのご支援をくださるとありがたいです」(中尾氏)「AWS上へのシステム構築に際しては、運用コストを抑制できるよう、さまざまな知見を提供いただきました。また、AWSの新機能の活用についても、実践的なアドバイスをいただき非常に助かりました。今後とも一緒にシステム開発を盛り上げていければと思います」(大塚氏)
インタビューにご協力いただいた方々
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- 情報サービス部門 情報サービスユニット プロダクトマネージャー
- 中尾 理恵 氏
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- 情報サービス部門 情報サービスユニット/技術戦略ユニット ソフトウェアエンジニア
- 大塚 恭平 氏
株式会社日本経済新聞社
「日本経済新聞」および「日本経済新聞 電子版」を中核とする総合メディア企業グループ。2010 年にサービスを開始した電子版は有料会員数97万、日本経済新聞と合わせると購読数の合計は234万(2024年7月時点)を突破し、ニュース配信の分野で業界をリードしています。2020年には金融専門メディア「NIKKEI Financial」、2022年には自動車産業に特化した「NIKKEI Mobility」をはじめ「NIKKEI Prime」シリーズなど専門メディアの展開を始めています。
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