各種通信システムの開発や品質保証に欠かせない通信用計測器など、幅広い分野の製品を提供するアンリツ。同社は基幹システムのSAP ERPを国内のクラウドサービス(IaaS)上で運用してきましたが、リソースの最適化と、コストの高止まりに悩まされていました。そこで同社はインフラ基盤をアマゾン ウェブ サービス(AWS)に移行することを決断。そのパートナーにBeeXを選定しました。移行はBeeXの支援もあってトラブルなく完了。リソースの柔軟性が向上し、コストも削減できました。さらに、BeeXの運用・監視サービス「BeeXPlus」を採用したことで、問い合わせ窓口が一本化し、コストも見える化されています。
- 課題
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- 従来のクラウドサービスは拡張が物理サーバー単位でリソースの最適化が困難
- 従来のクラウドサービスよりコストを削減したい
- ネットワーク帯域を稼働中の本番環境と共有しつつ移行作業を進めたい
- 解決したこと
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- サーバーやストレージのリソースの柔軟性が向上
- リソースの最適化によりコストが削減
- AWSの移行ツールを活用し、帯域を複数のサーバーで調整・日中のデータ量を抑えるなどの工夫で移行を実現
従来のクラウドサービスはリソースの最適化が困難。柔軟性があり安価なAWSへの移行を決断。
120年以上の歴史を持つ電気計測器メーカーの老舗・アンリツ。同社は、スマートフォンやタブレット端末の開発・製造に欠かせない通信用計測器の分野では世界でもトップクラスのシェアを誇り、現在は2023年度までの中期経営計画「GLP2023」のもと、5G分野を中心にネットワーク高速化の需要拡大に対応したソリューションの展開を進めています。
同社は2006年、ビジネスを支える基幹システムとしてSAP ERPを会計/購買/販売/生産管理まで含めたフルモジュールで導入しました。その後、2012年から2015年にかけて国内のグループ会社10社の基幹システムを統合し、ワンインスタンス・マルチカンパニー対応を実現しています。
SAP ERPのインフラ基盤については、2011年の東日本大震災を契機に、本社から関西のデータセンターへ移行しました。さらに2017年、ハードウェアの更新に合わせて国内のクラウドサービス(IaaS)を採用し、複数の周辺システムとともに移行しています。
そして2020年、同社は次期クラウドサービスについて検討。AWSへの移行を決断しました。その理由について、経営情報システム部 部長の篠原雄二氏は以下のように説明します。
「従来のクラウドサービスは、拡張が物理サーバー単位となっていたため、リソースの最適化が困難で、コストが高止まりする傾向にありました。そこで、柔軟に利用が可能なAWSへの移行を検討したのです。AWSはすでに他のシステムで実績があった上、2013年ごろからSAP ERPの検証・開発環境としても活用していました。コストを試算したところ、他のクラウドサービスと比べても安価になることが確認でき、採用を決めました」
SAP ERPとAWSでの実績を評価しBeeXをパートナーに指名。Web会議を通じて移行を丁寧にサポート。
AWSの採用を決めたアンリツは、2020年4月より移行パートナーの選定に着手。複数の候補の中から最終的にBeeXを選定しました。
「BeeXには2018年にSAP ERPのバージョンアップを依頼したことがあり、その際に実力があることはわかっていました。また、AWSについても数多くの実績があることも存じていましたので、今回の移行をお願いすることにしました」(篠原氏)
プロジェクトは2020年11月にキックオフ。2021年2月末までに移行を完了し、3月より本稼働をスタートさせています。今回、AWSへ移行したシステムはSAP ERPの本番環境に加え、従来のクラウドサービス上で稼働していたDHCPサーバーや、業務で利用しているWeb系システム、グループ会社が利用している経理系システムなど、合わせて8システムです。全部で55台の仮想サーバーを、4カ月という短期間で移行したのですが、そのステップについて経営情報システム部の田村幸大 氏は「どのシステムをどの順番で移行するかは、アプリケーション開発チームの要望に合わせて決めました。最初からSAP ERPを移行するのはリスクが高すぎるので、8つのシステムの中でも影響が少ないシンプルなものから移行し、最後にSAP ERPという順番にしました」と語ります。
移行では、SAP ERPをBeeXが担当。それ以外のシステムについてはBeeXで手順を作成し、OJTを実施したのちにアンリツのエンジニアが実施しました。なお、SAP ERPは他に影響が及ぶリスクを考えて、特に改修などは行わずシンプルに移行しています。移行前には入念にリハーサルを行い、想定通りのダウンタイムで移行できることを確認。作業は2月末の土日2日間で実施しました。
移行作業の際には、100MBpsのネットワーク帯域を稼働中の本番環境と共有するという厳しい要件が課せられていました。そこで、帯域を複数のサーバーで調整しつつデータの移行を実施。さらに、日中はデータ量を抑え、夜間にまとまった量を移行する工夫により問題をクリアしました。併せてAWS用移行ツールCloudEndureを活用し、システムを止めることなく動的に移行することでダウンタイムも抑えています。プロジェクトを振り返り、田村氏はBeeXの支援を次のように評価します。
「新型コロナウイルス感染症の流行による非常事態宣言下で行われたため、対面での打ち合わせや作業は一度もありませんでしたが、Web会議を通じて丁寧にサポートいただきました。たとえばネットワーク系のトラブルで接続できなかったときには、BeeXの担当者からつきっきりでアドバイスを貰うことで問題を解消することができました。おかげさまで、SAP以外のシステムもスムーズに移行を完了。AWS周りの設計から移行までを一通り体験できたことで、当社のエンジニアも確実に成長できたと思います」
全体システム構成
各システムのパフォーマンスが向上。リソースの柔軟性が増し、コストも削減。
現在、SAP ERPを含む各システムは順調に稼働しており、それぞれのパフォーマンスも向上しています。さらにサーバーやストレージのリソースの柔軟性が増し、コストも削減できました。
また、今回からAWSの運用・監視はBeeXに委託。クラウドライセンスと運用を一元管理するサービスパッケージ「BeeXPlus」を採用しました。BeeXPlusでは、独自の管理コンソール「BeeX Service Console(BSC)」が提供され、ステータスや費用をグラフィカルな画面で見ることができます。
「サービスデスクの文書管理の機能が提供されるBSCを活用することで、障害に対する問い合わせ窓口が一本化され、対応がかなり楽になりました。費用の管理についても、BSCならインスタンス単位で料金がわかるため、リソースを払い出すアプリケーション開発者に対し、コスト意識を持って使ってもらうことができます。今後はSAP BASISの運用もBeeXにお任せしたいと考えています」(篠原氏)
将来のSAP S/4HANA化に向けてクラウドネイティブなアーキテクチャを検討
今回のクラウド移行により、アンリツのほとんどのシステムはAWSを中心としたパブリッククラウド上で稼働することになりました。今後も同社はSaaSも含めクラウド化を加速させていく方針で、さしあたりオンプレミスのコンバージドインフラストラクチャ環境で稼働しているCAD系システムのクラウド移行を検討しています。
また、SAP ERPが2027年にサポートが切れるのに合わせ、SAP S/4HANAへの移行も視野に入れており、その際にはクラウドネイティブなアーキテクチャへの移行も考えているといいます。「このたびのAWSへの移行は、将来のSAPS/4HANA化に向けた準備段階とも言え、BeeXに運用をアウトソーシングすることもその流れにあります。今回のプロジェクトは既存サーバーを“リフト”するだけでしたが、将来的には“シフト”の段階に進んでいきます。そのためにもBeeXにはAWSのサービスを活用するためのアドバイスを期待しています」(篠原氏)
情報通信、食品・薬品、防災・減災の分野で人々の暮らしを支えるアンリツのビジネスは、BeeXの支援のもと、さらに進化を遂げていくことでしょう。
インタビューにご協力いただいた方々
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- 経営情報システム部 部長
- 篠原 雄二 氏
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- 経営情報システム部 インフラソリューションチーム
- 田村 幸大 氏
アンリツ株式会社
『「はかる」を超える。限界を超える。共に持続可能な未来へ。』を経営ビジョンとして掲げ、各種 通 信システムや サービ ス・アプリケーションの開発、品質保証に欠かせない計測器や食品・医薬品用異物検出機、重量選別機、遠隔監視制御システム、帯域制御装置などを提供。中期経営計画「GLP2023」では、ローカル5G、EV・電池、医療・医薬品、光センシングの4つの領域を重点的に開拓し、2030年までに売上高2,000億円の達成を目指している。
SAP は、ドイツおよびその他の国々におけるSAP SEの登録商標です。
アマゾン ウェブ サービスおよびAWSは、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
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