目次
SAP Cloud ALMとシステム運用監視 2 (SAP Cloud ALMとSAP S/4HANAとの接続と監視まで)
連載2回目として、SAP Cloud ALMとSAP S/4HANAオンプレミスシステムとの接続、またその設定のために利用するSAP BTP Cockpitについて触れていきます。
SAP Cloud ALMでのシステム監視は、管理用Webサイトより、接続済みSAPシステムの状態を、OSレベル、クライアント毎、システム単位で見ることができるものになります。一般ユーザ(モニタリングなどのみ許可されているユーザ)は、SAP Cloud ALMの各種提供サービスのWebサイト経由でログオンでき、SAP BTP Cockpitでの操作は必要ありませんが、特に一人目の管理者は、SAP BTP Cockpitでのサービス追加、ユーザ登録などの作業が必用になることから、ここで少し触れておくことにします。
目次
- SAP BTP Cockpit
- SAP BTP Cockpitチュートリアル
- SAP BTP Cockpitの製品版と評価版
- SAP Cloud ALMとSAP S/4HANA On-premiseとの接続
- 最後に
- リンク集
SAP BTP Cockpit
BTPとは、Business Technology Platformの略です。
SAP BTP Cockpitの基本契約費用は、既存SAPシステムに対して、エンタープライズサポート契約を結んでいればあ使用可能なSAP提供のサービスとなります。
各サービスは、初期費用、最低利用期間、といった制限はなく、気軽にサービスを試せるような金額に設定されています。また、契約は自動更新であり、利用したサービスのみに関して、費用の請求がきます。サブスクリプションサービス制に切り替えることができることから、使用料金の傾向を見ながら、そのあたりの予算や契約内容の見直しをすることも可能です。
詳細はこちら(英語)に記載されています。
SAP BTP Cockpitチュートリアル
無料でサービスを学習するための環境として、チュートリアル が用意されています。いずれも英語となってしまいますが、ステップバイステップにて説明されているので、チュートリアルを見ながら、申し込みやサービス開設などを行っていくのもよいでしょう。
また、デモテナント環境もあります。そちらに触れてみるのもよいかと思います。
製品版と評価版
SAP BTP Cockpitには、製品版と評価版が存在しており、SAP S/4HHANA On-premiseシステムと接続して、システム情報を取得するには、製品版(パートナーエディション含む)の契約が必要でした。このことから、SAP BTP Cockpitの多数ある機能のうち、どのサービスを利用したいのか、またそのサービスは評価版に含まれるのかなどの事前確認が必要となります。いざサービスの購入をしようとしたところ、存在しなくてできないということがないようにも、十分確認しておくとよいでしょう。
とりあえず学習するための環境として、無料利用環境の利用は、お手軽ではないでしょうか。この無料利用環境は製品版のすべての機能が利用できるわけではありません。また試用期限が過ぎた後、継続して使用したい場合は、製品版への変更をすることで、継続して使用することができます。
また、評価版(フリートライアル)が存在していて、こちらからアクセスすることができます。
無料版では、約30の機能が提供されていて、こちらからアクセスして確認と申し込みをすることができます。申し込みの際、クレジットカード情報の登録が必要となることがあります。(個人の場合)
注意:評価版にはSAP Cloud ALM APIの機能の提供は含まれていないため、製品版のほうの申し込みが必要となります。
こちらのリンクからスタートページに飛び、右上のログインより権限を持っているS-User IDにてログインを行います。
SAP Cloud ALMとSAP S/4HANA On-premiseとの接続
実際に接続をしていきます。大まかな流れは、下記の通りとなります。詳細なものは、最後のリンク集に参考サイトを掲載しているので、そちらを参考にしてください。
- 接続したいS/4HANAシステムの、SAP BASISとSAP ST-PIのSPレベルを調べる
- 上記で調べたSPレベルに対応したSAP Noteを適用し、関連作業を行う。
- SAP Client 000に、SAP Cloud ALMとの接続ユーザを作成し、指定のロールを付与する
- SAP BTP Cockpitから、テナント作成、SAP Cloud ALM Foundationサービスを購入追加(エンタープライズサポート加入であれば、無料利用可能)
- SPACEを作成し、アクセスキーを生成、ダウンロード
- SAP GUIより、T-CD: /n/SDF/ALM_SETUP を実行し、SAP Cloud ALMとの接続設定、SAP RFC接続の生成(自動)、SAP Cloud ALMとの接続ユーザ設定、SAP ABAP ジョブ選択のと動作間隔の設定を行います。
- SAP Cloud ALMからシステム状態を見てみる
1. 接続したいS/4HANAシステムの、SAP BASISとSAP ST-PIのSPレベルを調べる
SAP オンプレミス環境と、SAP Cloud ALMとの接続には、オンプレミスシステム側で、事前に下記のような条件を満たしている必要があります。
- SAP BASIS 7.40 SP20 or later
- SAP ST-PI 7.40 SP14 or later
2. SAP Noteを適用する
SAP ST-PIのSPレベルに対応した、最新のSAP Noteを適用します。必要に応じてマニュアル作業がありますので、手順に従って行います。
3. SAP Cloud ALM接続用ユーザやロールを作成する
SAP S/4HANA オンプレミスシステムのClient 000上にて、SAP Helpや、SAP Noteの手順に従い、SAP Cloud ALMとの接続ユーザに使うロールなどの生成/更新を行います。
4. SAP BTP Cockpitへのログインと設定
SAP BTP Cockpitへのログイン後、Instance and Subscriptionsから 利用したいサービスを申し込み、接続に必要な一連の作業を行います。このあたりの手順は、SAPのBlogや、SAP公式のYouTubeチャンネルなどにて解説されていますので、確認しながら行うとよいでしょう。また合わせて、チュートリアルも利用すると、一連の流れをより把握しやすくなるのではないでしょうか。
今回はSAP Cloud ALMを追加しています。追加した結果は下記の通りとなりました。
5. アクセスキーの生成とダウンロード
こちらの方法も、SAP Helpやそこにリンクが記載されていた動画を参考に、アクセスキーを生成してダウンロードしています。
ダウンロードしたアクセスキーファイルは、JSON形式で記載されているテキストファイルです。管理下のSAP Cloud ALMに接続するための認証情報や宛先が記載されています。一度きりのダウンロードではなく、何度でもダウンロードできます。一つのスペースに対して、発行できるキーは一つとなりますので、ご注意ください。
上記状態で必要なサービスキーを取得したりして、SAP S/4HANA オンプレミスシステムとの接続準備に備えます。
また、各ユーザに任意のタスクのみを管理してもらうなどのことを考慮する場合、こちらだけでなく、Identity Authenticationへのユーザ登録と、メールアドレスなどの認証作業が必要となります。一人管理者、一人構築管理作業では、いざ他のユーザから使ってみたいといわれた際に、どこにどのユーザ情報を登録したり権限を付与しなければならないか、混乱することになりますので、できたら異なる権限を付与するユーザを2名分用意するとよいと思います。
6. SAP S/4HANA On-Premiseシステムとの接続
上記までに用意した情報やユーザを利用して、SAP S/4HANA のSAP GUIより接続設定を行います。作業は、Client 000にて行います。
実際の画面を見てみましょう。これはClient 000にて、設定に必要な適切なロールを割り当てられたユーザで、T-CD: /n/SDF/ALM_SETUP を実行したときの画面です。この画面は、ST-PI 7.40 SP17の画面になります。
画面の指示に従い、SAP Cloud ALM Foundationからダウンロードしたキー情報を入力したりして、接続設定を行います。
設定中、2. Maintain HTTP destinationのCreate/Update destinationをクリックすると、自動的にこのようなRFC接続が作成されます(T-CD: SM59より)
3. Enter Background user and register systemに必要情報を入力して、接続が成功すると、4. Choose Use Case to be collected Active Use Caseのボタンがクリックできるようになるので、そこで、利用したいサービスを選択して有効化します。
これは、どのABAPタスクジョブを、何分間隔で行うかの選択と時間設定をする画面となります。このジョブに基づいて、SAP Cloud ALMのほうに登録したS/4HANAやERPシステムの情報が送信されて、データが蓄積されていきます。
7. SAP Cloud ALMからシステム状態を見てみる
さて、登録したシステム情報の状態を管理/監視するには、実際のシステムをモニタリングするメンバーは、XSUAA_SAP Cloud ALMサイトを介してログインします(SAP BTP Cockpitを介してアクセスする際も、このサイトを介していきます)。
SAP Cloud ALMサービスを見た時のスタート画面はこのような感じです。この画面はFiori UI5ベースでとなっているので、ある程度自由にレイアウトをカスタマイズすることもできます。また割り当てられたユーザのロールを考慮することで、表示できるタイルを限定的にすることも可能です。
ヘルス監視画面の例
言語インポート中のSAP S/4HANAの状況を、ヘルスモニタから取得してみました。それぞれの項目ごとにグラフ表示されるため、システム全体の情報から、個別に情報を表示して確認する必要があります。
ヘルス監視内のHANA Allocated Memoryの使用量の変化
Host Memoryの使用量の変化
HANA断片化メモリの推移
これらの監視項目は、SAPからすべて標準で提供されており、接続設定を完了したところで、SAPシステムや稼働しているOSの状態を取得できる状態となっていました。
実際の接続設定は、決められた特定のクライアントで行っただけですが、そのシステムに存在している全てのSAPクライアントの状態を、クライアント単位で取得表示することができます。また、既存で用意されている指定期間を絞るテンプレートなどを利用することにより、システムの利用状況を任意の期間で表示比較して、システムの利用状況や負荷状況、傾向などをつかむこともできるでしょう。
最後に
今回、SAPが次世代監視システムの一つとして利用を強く提案しているSAP Cloud ALMの監視機能を使うにあたり、製品概要や接続設定等を調べてから、一連の作業を行いました。導入したいと思ったとして、現行システムと前提条件が合致しているのか、たとえ満たされていたとして、現在のSPレベルが(最新でないがゆえに)使いたい機能を利用できる状態であるのか、試してみたい一つのシステムだけSP環境を整えるのか、管理上利用しているSAPシステムを全部をそろえて上げる必要があるのか、など場合により関連するシステム全体への影響も考える必要があるようです。また、各種ヘルプや方法のページにおいて、構築時の手順はあるものの、実際の運用でよく行うユーザ追加やロール付与などについての記述が薄かったりしました。実際の利用を考慮すると、ユーザ登録と管理が1か所で収束しているように見えないところがあり、そこはセキュリティ的にも注意すべきところのようです。各種情報が散在していて見つかりにくいこともあることから、ある程度情報を集めてまとめてから取り掛かるのもありなのではないでしょうか。
現時点でのシステム運用監視の機能ですが、接続されている時ステムの情報は収集され、その情報は取得表示できますが、レポートの表現や通知の仕組みについては、まだ改善したほうが良い部分も多々ある現状です。このあたりは、クラウドサービスという特質上、随時改善されていくと思います。今後の機能改善・機能追加に期待しています。
この記事により、皆さまがSAP Cloud ALMに興味をもち、実際に役に立つことを切に願っております。
参考リンク一覧
SAP Cloud ALM運用機能概要とSAPオンプレミスとの接続方法 | SAP Blogs
SAP Cloud ALM – Integration & Exception Monitoring 機能概要・エラー分析方法について
How to Set Up Monitoring for SAP S/4HANA, SAP Business Suite, and SAP ECP with SAP Cloud ALM
Setup for SAP S/4HANA and SAP Business Suite
Integration & Exception Monitoring - Setup & Configuration (sap.com)
SAP Cloud ALM for Operations - Expert Portal
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