各種スポーツ関連事業を展開するドームでは、SAP ERPで構築した基幹系システムをオンプレミス環境で運用していましたが、リアルタイムプラットフォームの実現を目指し、アマゾン ウェブ サービス(AWS)への移行を決断しました。そこで同社は、インフラやアプリケーションに関する知識と経験の豊富なBeeXをパートナーに選択。この際、AWSの高速インスタンスを一時的に活用することで、SAP ERPとSAP BW、併せて5TB 近い巨大なデータ量を、わずか12 時間のダウンタイムで移行させています。
今回の移行により、同社の基幹システムはそのときのニーズに合わせてリソースを調達することが可能になり、事業の成長を見据えたインフラへと進化しました。
- 課題
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- 既存ハードウェアの老朽化
- 企業の成長に合わせてシステムを強化したい
- 将来に向けてプラットフォームを最適化したい
- 解決したこと
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- クラウド化によりハードウェアの更新や運用から解放され、より重要な業務へ注力可能に
- クラウド化によりリソースの調達も自由自在
- 最新テクノロジーが搭載された製品やサービスを迅速に適用可能
将来に向けてプラットフォームの最適化を目指しSAPシステムをAWSへと移行
「社会価値の創造」を企業理念に掲げ、「スポーツを通じて社会を豊かにする」をミッションとするドームでは、アスリートをトータルにサポートすべく4事業を展開。中でも同社が日本総代理店を務める「アンダーアーマー」製品は、その品質の高さから野球、サッカー、バスケットボールなど多くのプロに愛用されています。また近年は我が国におけるスポーツの産業化を目指し、大学や高校の部活を支援する「アカデミック・インフラストラクチャー・プロジェクト」をはじめ、さまざまなプロジェクトに取り組んでいます。
さて同社はITの活用にも積極的で、1998年ごろにSAP ERPを導入し、基幹システムを構築。販売管理、在庫管理、購買管理などの業務で利用してきました。2009年には最新版のECC6.0にアップグレードしていますが、ここにきて既存ハードウェアが老朽化してきたことから、そのクラウド化を検討するようになりました。当時の状況について、営業本部 オペレーション企画室 ITオペレーションチームの西貴義氏は「データ量も5TB近くになり、システムが追いつかなくなっていました。また、当社では2020年度までのIT中期計画で『次世代ERP』と『Real-Timeプラットフォーム』の実現を掲げているのですが、そのためにも将来に向けたプラットフォームの最適化が必要でした。こうした経緯もあって、システムをクラウド化する動きが出てきたのです」と振り返ります。
インフラとアプリケーション 両方に精通したBeeXを選択
ドームはSAPシステムのクラウド基盤としてAWSを選びました。この点についてコーポレート本部 IT&デジタル部の冨田哲也氏は「もともと当社はクラウドの活用にも積極的ですが、AWSについては当社のデータ連携基盤や倉庫管理システムなどで既に運用実績があり、その流れで採用に至りました」と説明します。
一方、移行を支援するパートナーにはBeeXを指名しました。その理由について、コーポレート本部 IT&デジタル部 部長の渡辺智宏氏は「移行にはインフラとアプリケーション、それぞれの知識と経験が必要になりますが、BeeXはその両方に精通していました。加えて、当社の構想を短時間で把握した上で具体化し、『こうしたかたちでクラウド化を進めれば、将来まで見据えた基盤が実現します』と提案してくれたのです。このやりとりからこちらの意をうまくくみ取ってくれそう、期待に応えてくれそうと判断し、パートナーに指名しました」と語ります。
AWSの超高速インスタンスを一時的に活用し、システムのダウンタイムを極限まで短縮
移行プロジェクトは、2016年9月にスタート。環境構築、テスト、リハーサルなどを経て、6カ月後の2017年2月には本番環境をAWSへ移行しました。当初、移行には40時間を見込んでいましたが、①AWS上に中間環境を設けてデータ移行のためのスタンバイDBを作成、②本番環境や中間環境向けに高性能で超高速なインスタンスを一時的に活用、③データインポート処理を最適化…などの工夫を行い、本番環境のダウンタイムを12時間に抑えています。
「当社は24時間体制で稼働しているため、ダウンタイムをできるだけ短くする必要がありました。そこで一時的なコスト増が発生しますが、高性能なインスタンスを活用することで、ダウンタイムを削減する方法を選択しました」(西氏)
なお今回のプロジェクトでは、DB圧縮など構成最適化を実施することで、容量の削減と性能の向上を実現しています。また、SAPのDBをAWSの別のゾーンに複製することで、可用性も向上させています。そしてさらに、BeeXのノウハウをもとに統合監視体制を整備。障害が発生した場合も速やかに対応できるようにしました。
ドーム様 移行後のシステム概要図
バッチ処理やデータの抽出にかかる時間が大幅短縮
インフラのパフォーマンスが向上したことで、各種作業にかかる時間は大幅に短縮されました。たとえば、それまで約7時間かかっていたバッチ処理が、現在は4時間程度で終了。レポート用のデータを抽出する時間も従来の20分前後から1分程度へと短縮されています。
また、インフラの運用についても、クラウド化によって必要に応じリソースを自由自在に調達できるようになった上、サーバー更新や運用などの作業から解放されることになりました。
「即座にリソースを追加できるため、ビジネスの成長に合わせてインフラを拡張できるのはメリットですね。また、ハードウェアの面倒を見なくてよいというのは有難い話で、空いた時間をより重要な業務に振り分けることができます」(冨田氏)
「次世代ERP」と「Real-Timeプラットフォーム」の実現に向けて
ドームでは、今後IT中期計画の実現を目指し、インメモリーDBを採用したSAP S/4HANAなど最新の技術動向を見ながら検討を進めるとのことです。
「現場の社員が商品の売上の推移やKPIをリアルタイムで確認できる環境を構築する上でもBeeXの支援は重要です。今後の提案に期待しています」(渡辺氏)
日本のスポーツの革新を支援する同社のチャレンジは、IT面でも続いてゆきます。
インタビューにご協力いただいた方々
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- 営業本部 オペレーション企画室 ITオペレーションチーム
- 西 貴義 氏
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- コーポレート本部 IT&デジタル部
- 冨田 哲也 氏
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- コーポレート本部 IT&デジタル部 部長
- 渡辺 智宏 氏
株式会社ドーム
1996年に創業。1998年に米国のスポーツアパレルブランド「アンダーアーマー」と日本総代理店契約を締結し、一躍注目を集めました。現在は「スポーツプロダクト事業」「スポーツサプリメント事業」「スポーツメディカル事業」「パフォーマンスディレクション事業」の4 事業を展開し、1人のアスリートもしくは1つのチームに対し、ワンストップで最高の解決策を提供。スポーツの産業化にも注力しており、学校の部活動などを支援する「アカデミック・インフラストラクチャー・プロジェクト」をはじめ、東日本大震災からの復興を目的とした「いわきグローリープロジェクト」、読売ジャイアンツのブランド価値の向上を目指す「ジャイアンツプロジェクト」などを手がけています。
SAP は、ドイツおよびその他の国々におけるSAP SEの登録商標です。
アマゾン ウェブ サービスおよびAWSは、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
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