「お口の恋人」をコーポレートメッセージに、菓子、アイスクリーム、健康雑貨などの製造・販売を手がけるロッテ。DXを推進している同社では、データ分析基盤の内製化を検討。その一環として、基幹システムと販売計画システムをつなぐデータ連携基盤をアマゾン ウェブ サービス (AWS) 上へ構築することにしました。若手社員と中堅社員からなるチームによるプロジェクトを推進するにあたり、同社は開発パートナーにBeeXを指名。高品質なデータ連携基盤が実現するとともに、各社員がエンジニアとして成長。影響は他の社員にも広がり、社内に新たな取り組みに挑戦する機運が高まっています。
- 課題
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DXを推進するにあたり、データ分析基盤の内製化を検討
ファーストステップとして、基幹システムと販売計画システムをつなぐデータ連携基盤を構築したい
若手社員と中堅社員6名によるチームが発足するも、内製開発を支援するパートナーが必要
- 解決したこと
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BeeXの手厚い支援の下、品質の高いデータ連携基盤を内製で構築できた
若手社員のマインドセットが変化、エンジニアとして成長
他の社員にも好影響、社内に新たな取り組みに挑戦する機運が高まる
DX推進には内製化比率の向上が必要
データ連携基盤の構築に若手社員4名が立候補
創業以来、「ガーナ」「雪見だいふく」「コアラのマーチ」「チョコパイ」「キシリトールガム」「クーリッシュ」など、数々の人気商品を生み出してきたロッテ。近年は、新たな価値の創造や現代社会の課題解決を目指し、カカオ専門店「LOTTE DOCacao STORE」を東京・渋谷にオープンしたり、健康の観点からガムを噛む活動を推進したりと、さまざまな取り組みを行っています。
同社は2018年、事業の全体最適に向けて、菓子・アイス製造のロッテ、菓子販売のロッテ商事、アイス販売のロッテアイスの3社を統合しました。これに合わせて基幹システムをSAP S/4HANAに刷新。並行してその他の業務システムや仮想デスクトップ環境を、順次AWSのクラウド環境へ移行させていきました。
こうして同社は主なシステムをクラウドへと移行させたのですが、新たな課題として“内製化比率の向上”が浮上してきました。この点についてICT戦略部 部長の緒方久朗氏は「システムのクラウド化の次のステップはDXの推進になりますが、これを実現するためには現場の要望や市場の変化に合わせてスピーディかつ柔軟に対応する必要があります。しかし、外部のベンダーに依存したままではそれも難しいため、内製化比率を高め、社内にスキルやノウハウを蓄積することにしたのです」と語ります。
取り組みの第一弾として同社は、データ分析基盤の構築を検討することにしました。そのねらいについてICT戦略部 情報分析課の橋本桂祐氏は「蓄積されたデータをビジネスに活用し、データドリブン経営を推進するにしても、各事業部門がバラバラに分析ツールを導入していては、コストがかかりますし、統制も取れません。そこで、全社で利用できる共通のデータ分析基盤を内製で構築することにしたのです」と説明します。
こうしてデータ分析基盤の構想がスタートしたのですが、時を同じくして新たに販売計画システムを導入することが決まり、基幹システムとのデータ連携基盤をAWS上に構築することになりました。そこで、構想のファーストステップとして、このデータ連携基盤を内製で構築することにしたのです。「当時、I C T 戦略部の半数以上のメンバーがAWSのトレーニングを受講したばかりで、習得した技術を実践する場を求めていました。学んだ知識を活かすには、実際のシステム構築を通して自分たちで難題を乗り越えるのが近道です。そこで有志を募ったところ、課の垣根を超えて4名の若手社員が手を挙げてくれたので、彼らとともに開発を進めることにしました」(橋本氏)
高品質なデータ連携基盤の構築と同時にエンジニアも育成するという高難度な要件に対応
とはいえ、AWSの開発が初めてのメンバーが、データ連携基盤をすべて自力で構築するというのも不可能に近い話です。そこでロッテは開発を支援してくれるパートナーの紹介をAWSに依頼。4社にRFPを送付し、提案を受けた中からBeeXを選びました。
「決め手は、RFPの内容をかみ砕いた上で提案していただけたことです。私たちの要望は、品質の高いデータ連携基盤を構築するのと同時に、初めてAWSに触るエンジニアの育成も行うという難易度の高いものでしたが、BeeXはこれをより深く理解してくださり、我々の要望を十分にくみ取っていただきました。加えて、AWSのアーキテクチャだけでなく、Pythonによるコードの作成まで支援いただけること、支援体制も状況に合わせてメリハリを付け、柔軟な料金で対応いただけることもポイントになりました」(橋本氏)
こうして2022年5月よりBeeXがプロジェクトに参画、本格的な開発がスタートしました。基本設計、開発、内部結合テストなどを経て、7月にデータ連携基盤の構築を終了。その後、別のベンダーが導入を担当した販売計画システムと連携し、9月より本稼働を開始しています。
このたび構築したデータ連携基盤は、SAP S/4HANAのデータをAmazon S3で構築したデータレイクに蓄積し、AWSのETLツール(AWSGlue)とAWS Lambdaを用いてデータ変換。変換したファイルを販売計画システムとAmazonECSのコンテナで連携するというもので、一連の処理をAWS Step Functionsでバッチ化しています。短期間で構築するため開発体制はアジャイルに近い形式を採用し、PoCを念入りに繰り返しながら開発を進めていきました。「PoCでは、AWSの各種サービスが確実に動作することがわかるまで、1本の連携バッチを作ることに絞って実現性を検証しました。結果として手戻りもなく、スムーズに進めることができました」(橋本氏)
今回のプロジェクトには人材の育成という目的もありましたが、その点でも成果は大きかったといいます。「6名のメンバーのうち、4名は入社3年目~4年目で、当初はフォロワー的な意識が残っていました。そこで、プロジェクトの背景から説明し、3年後の自分自身の姿を想像してもらうことで主体的な行動を促し、モチベーションを高めるようマインドセットの転換を図りました。結果、各自がAWSのサービスについて調査したり、実際に作ってみたりと、自発的に取り組むようになりました」(橋本氏)
開発当時、入社4年目だったICT戦略部 情報分析課の下地怜氏は、今プロジェクトにおいて成長したエンジニアのひとりです。「私も当初は基礎知識程度しか持っておらず、こうしたプロジェクトに立ち上げから関わることも初めてでした。そのため、AWSの技術情報を調べたり、わからないことをBeeXやAWSに聞いたりしながら徐々に理解を深めていきました。今回の経験を通じて、自らが積極的に動けば高い壁を乗り越えることができることがわかり、意識が変わるきっかけになりました」(下地氏)
新たな取り組みに挑戦する機運が高まる
各メンバーの学習意欲も向上
本プロジェクトの成功により、ロッテ社内では新たな取り組みに挑戦する機運が高まっています。今回開発を担当した6人のエンジニア以外にも影響は広がっており、新たに工場のDX化を支援するスマートファクトリーのプロジェクトが数名の有志によって立ち上がりました。
「ICT戦略部のメンバーには、自分たちの仕事が依頼されたシステムを作ったり、システムのお守りをしたりするだけでなく、自ら手を挙げればチャレンジできる環境にあると理解してもらうことができました」(緒方氏)
また、こうしたチャレンジを実現するべく、メンバーの学習意欲も向上しており、橋本氏や下地氏をはじめ、数名がAWS認定ソリューションアーキテクト アソシエイトの資格を取得し、自ら学ぶ意識が高まっています。
プロジェクトで得たノウハウを活かし
全社共通のデータ分析基盤の構築を進める
ロッテは今後、プロジェクトで得たノウハウを活かしながら、当初の目的である全社共通のデータ分析基盤の構築を進めていく計画です。具体的には、Salesforceとのデータ連携や、POSデータを活用した需要予測の分析基盤の構築について検討を進めています。
今回のプロジェクトにおけるBeeXの対応について下地氏は「こちらからの質問に対するレスポンスが早く、そのおかげでスピード感を持って開発することができました。データ分析基盤の構築においても、引き続き幅広い支援をお願いします」と述べ、橋本氏も「内製の開発においては、リリースするまでのラストワンマイルが最も難しいところです。BeeXには、ラストワンマイルのトラブルシューティングで親身になって問題を分析いただき、ベストプラクティスに準じた形で回答をもらうことができました。今後、当社が内製を拡大していく上で、AWSはじめ、あらゆるクラウドのハイレベルなデータ活用を提案いただけると助かります」と期待を語ってくれました。
インタビューにご協力いただいた方々
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- ICT 戦略部 部長
- 緖方 久朗 氏
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- ICT 戦略部 情報分析課
- 橋本 桂祐 氏
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- ICT 戦略部 情報分析課
- 下地 怜 氏
株式会社ロッテ
ロッテ1948 年に創業。チューインガムの製造・販売から始まり、1964年にはチョコレート、1972年にはアイスクリームに事業を拡大。現在は各分野でトップクラスのシェアを誇ります。社名の「ロッテ」は、ゲーテが著した小説「若きウェルテルの悩み」のヒロイン「シャルロッテ」に由来しており、「永遠の恋人」として知られる彼女のように、「一人でも多くの人々に愛される会社にしたい。愛される製品を作っていきたい」という想いが込められています。同社は、創業の精神である「ロッテバリュー」のもと、人々の生活を豊かにする新たな価値の創造「ロッテノベーション」にチャレンジしています。
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