SAPのバージョンとカーネルリリースの関係を理解する

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Koshi

SAPのバージョンとカーネルリリースの関係を理解する

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2021/10/18:77X, 78Xカーネル保守情報を更新しました。

SAPシステムを安定稼働させるためには、製品の保守期限を意識することは重要ですが、SAPカーネル(OSプログラム)の観点で有効バージョンかどうか、またその保守期限はいつまでなのか、という点もシステムのメンテナンス計画を立案する上で重要な要素になります。
本記事では、現在基盤として主流となっているSAP NetWeaver 7.0~7.5の製品に該当するSAPカーネルのバージョンとその保守期限、そして有効バージョンの意味を整理します。また、SAP S/4HANAの各製品のSAPカーネルバージョンの保守期限と有効バージョンについても触れます。
SAPカーネルについて掘り下げる前に、前提知識をまずお話したいと思います。NetWeaver7.0~7.5を対象とするSAPカーネルは、2つのカーネルバージョンが常時サポートされます。

  • Standard Version (Standard Kernel)
  • Innovation Version (Innovation Kernel)

Standard VersionとはSAPカーネルにおけるデフォルトバージョンにあたり、多くのお客様の利用を想定したものになります。一方でInnovation Versionとは文字通り機能追加や改善等を積極的に取り入れる革新的カーネルという位置づけになります。(決して安定していないという意味ではありませんのであしからず)まだ仮の話として、将来的に新しいカーネルがリリースされたとすると、現行のStandard Versionには保守期限が設定され保守切れとなり、Innovation VersionがStandard Versionへ、新しくリリースされたカーネルはInnovation Versionへと入れ替えが起こるということになります。
抽象的な話ではよくわからないので実際のカーネルで見てみましょう。まず、SAPカーネルのリリースロードマップから方向性が示されており、以下の2種類に大別されます。

カーネル対象SAPバージョン
7.2XNetWeaver7.0~7.31(SAP_BASIS700~731)
7.4XNetWeaver7.4~7.51(SAP_BASIS740~751)

7.2X系と7.4X系の2種類の中に、それぞれ有効バージョンが2種類存在します。まずは7.2Xカーネルの中身ついて掘り下げてみます。 

カーネルリリース
保守期限備考
720 / 720_EXT保守切れ
721 / 721_EXT2020.12.31Standard version
7222022.12.31Innovation version
722_EXT2025.12.31Innovation version
722 EXT22025.12.31Innovation version
PL 920 以上
ABAP Only

元となる情報源はSAP社のノート番号1744209です(参照にはSAP社SユーザIDが必要です)。リリース7.2Xでは最新カーネルが下位互換カーネルとして大きな前提条件なく利用可能です。DCK(Downward Compatible Kernel)とも表記されます。併せて、2880246 のノートも参照ください。722 EXT2は、ABAPのみであり、またOS/DBに対して制限が存在します。詳細は、SAP Product Availability Matrix (PAM) を参照ください。
それでは、NetWeaver7.4~7.5を対象とする7.4Xカーネルと7.5Xカーネルについても見てみましょう。

カーネルリリース保守期限備考SAP Note
742保守切れ
2128122
745保守切れ
2251972
7492022.12.31予定Standard Version2350788
7532025.12.31予定Innovation Version
2556153

7.4Xカーネルは745カーネルの保守が終了しました。749、753カーネルの2種類が引き続きのサポートバージョンとなります。元となる情報源はSAP社のノート番号1969546です。最新の753カーネルにアップデートされる場合はSAP社ノート番号2556153及び2451067に従い前提条件を確認して下さい。また、最近ではあまり関係ないかもしれませんが、NetWeaver7.4 SP0~7とSAPカーネルは利用に条件がありました。このような情報は随時SAP社のノートに記載されることから、カーネルの過渡期にはノート番号1969546及び関連ノートをしっかりと確認する必要があります。
年号「令和」に対応したカーネルがリリースされています。各カーネルバージョンのパッチレベルに関しましては、ノート番号2600012を確認ください。
次に、SAP S/4HANAのカーネルバージョンについて触れていきます。

S/4HANA
カーネルバージョンNetWeaver /
ABAP Platform
バージョン
1511749, 753NetWeaver7.50
1610749, 753NetWeaver7.51
1709753NetWeaver7.52
1809773ABAP Platform1809
1909777ABAP Platform1909
2020781ABAP Platform2020
2021785ABAP Platform2021

77x及び78xのカーネルの保守期限に関しましては、下記のようになります。 

カーネルリリース保守期限備考SAP Note
7732021.04.08 終了

7772024.12.31 終了予定DCK to Kernel version 773 active with 777 PL 200 or higher2870484
7812023.03.31 終了予定

7852024.12.31 終了予定planned as DCK to Kernel version 7812907361

詳細は、SAP社ノート番号28076712812273、及び2907361を参照ください。
カーネル777は、773に対して下位互換があります。詳細は、SAP社ノート番号2870484を参照ください。
各製品において、SPを適用する際は、SPがリリースされたときの最新のバージョン以上のものを使うというのが、通常です。
Maintenance Planner実行の際は、現時点での最新バージョンがダウンロードリストに入ってきます。
最新ではない任意のカーネルバージョンで、製品に対するSPを適用したい場合は、それぞれのSPに対するノート番号を検索し、エラーが出ないものを選んだり、回避策をとる必要があります。
74xと75xに関してはこちら、77xと78xに関してはこちらを参考に考慮ください。
SAP Kernelのまとまった重要情報として、こちらの記事を参考にしてください。
あわせて、こちらのノートも参考にしてください。
SAP製品において、一部の製品においては、条件を満たせば標準保守期限が2027.12.31となりました。弊社Blogにおいても、そのあたりをまとめておりますので、参考にしてください。

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