目次
はじめに
EC2インスタンスのコスト削減として、長期稼働するインスタンスについてはReservedInstance(RI)やSavingsPalsn(SPs)の適用を計画されるかと思います。
この両者について割引率を比較すると、基本は
- スタンダードRI と EC2インスタンスSPs の割引率が同等
- コンバーティブルRI と ComputeSPs の割引率が同等
といった形になるので、あとは
- キャパシティ予約をどう管理するか
- 柔軟性の考慮
- ボリューム割引の有無(RIはボリューム割引がある)
などの条件を検討し、最終的にどのリソースを購入するか決定します。
通常はRIのボリューム割引を狙えるほど大量購入するわけではなければ、柔軟性がより高いSPsの購入が基本になってきており。
のちのちの事を考えて柔軟性がより高いComputeSPsか、割引率の高いEC2インスタンスSPsか稼働されているシステムの状況から購入する対象が選定されるかと思いますが。
RIとSPsの割引率の対応関係について基本はとつけて説明したように。
すべてのケースで割引率が一致しているわけではなく、一部で割引率が異なる例外ケースがあります。
本記事ではこの例外ケースについて解説します。
OSがSLESの場合だけ、RIとSPsで割引率が異なるケースがある
Compute Savings Plans and Reserved Instances
例外ケースがどのようなケースかと言えば、上記ドキュメントに記載があり。
Savings Plans prices for instances running SUSE Linux Enterprise Server (SLES) are different compared to the corresponding RI price.
とあるように、OSがSLESの場合はRIと対応するSPsの価格が異なると記載されています。
本記事では2024年10月現在の東京リージョン価格表を確認してどのような違いが出ているか確認してみます。
AWS Price List API (AKA the Bulk API)からOfferファイルを取得して比較する
本記事ではAWS Price List API (AKA the Bulk API) から取得できる下記のOfferファイルの情報からSLESの割引率がどのようになっているか確認しています。
本記事では基本的には割引率が同等となるスタンダードRIとEC2インスタンスSPsの価格に着目して比較してみます。
具体的には下記のような条件で取得した対象の価格を比較しています。
RI側の抽出条件
- OSがSLES
- 東京リージョン(ap-northeast-1)
- 一括前払い
- テナンシー共有
- 提供クラス(スタンダード)
SPsの抽出条件
- OSがSLES
- 東京リージョン(ap-northeast-1)
- 一括前払い
- テナンシー共有
- EC2 Instance Savings Plans
なおRIとSPsのOfferファイルでは価格の持ち方は上記の条件では
- RIのOfferファイルではPricePerUnit項目には前払い金額
- SPsのOfferファイルではDiscountedRate項目には1時間のコミット金額
のように価格情報をもっており、m6i.largeのケースを確認すると
- RIのOfferファイル、PricePerUnit項目では 891
- SPsのOfferファイル、DiscountedRate項目では 0.10168
と入力されているため、SPs側の金額が1時間当たりの金額なので24*365をして1年分の金額に直してあげると。
0.10168*24*365で890.7168 となるため、RI側の891とこちらはほぼほぼ一致して同様の割引率となります。
割引率に差が発生しているインスタンスについて確認してみる
確認方法としては上記で記載した条件のRIとSPsともに1時間当たりの金額を算出し、その価格差が0.01ドル以上発生していた件数を数えた所、733件中58件となっていました。
具体的に下記のインスタンスとなっていました。
- a1.medium
- c5.12xlarge
- c5.18xlarge
- c5.24xlarge
- c5.2xlarge
- c5.4xlarge
- c5.9xlarge
- c5.metal
- c5.xlarge
- c5d.12xlarge
- c5d.18xlarge
- c5d.24xlarge
- c5d.2xlarge
- c5d.4xlarge
- c5d.9xlarge
- c5d.metal
- c5d.xlarge
- c6g.medium
- c6gd.medium
- c6gn.medium
- d2.4xlarge
- d2.8xlarge
- g3.16xlarge
- g3.4xlarge
- g3.8xlarge
- i3.16xlarge
- i3.8xlarge
- m5.12xlarge
- m5.16xlarge
- m5.24xlarge
- m5.2xlarge
- m5.4xlarge
- m5.8xlarge
- m5.metal
- m5.xlarge
- m5d.12xlarge
- m5d.16xlarge
- m5d.24xlarge
- m5d.2xlarge
- m5d.4xlarge
- m5d.8xlarge
- m5d.metal
- m5d.xlarge
- m6g.medium
- m6gd.medium
- p3.16xlarge
- p3.2xlarge
- p3.8xlarge
- r6g.medium
- r6gd.medium
- x1.16xlarge
- x1.32xlarge
- x1e.16xlarge
- x1e.2xlarge
- x1e.32xlarge
- x1e.4xlarge
- x1e.8xlarge
- x1e.xlarge
ここではいくつかのインスタンスについて、下記SavingsPlansとRIの価格表ページのスクリーンショットを取得して載せていますので、そちらで確認してみます。
m5.large の割引率の差について
- SPsの方が1時間当たり 0.098 USD で年間総額 858.48 USD 割引率 46%
- RI の方が1時間あたり 0.106 USD で年間総額 928.56 USD 割引率 41%
SPs(m5.large) 0.098 USD
RI(m5.large) 0.106 USD
m5.4xlarge の割引率の差について
- SPsの方が1時間当たり 0.643 USD で年間総額 5632.68 USD 割引率 41%
- RI の方が1時間あたり 0.616 USD で年間総額 5400.00 USD 割引率 44%
SPs(m5.4xlarge) 0.643 USD
RI(m5.4xlarge) 0.616 USD
c5.large の割引率の差について
- SPsの方が1時間当たり 0.088 USD で年間総額 770.88 USD 割引率 46%
- RI の方が1時間あたり 0.096 USD で年間総額 841.00 USD 割引率 41%
SPs(c5.large) 0.088 USD
RI(c5.large) 0.096 USD
いくつかのインスタンスで価格を比較してみて
上記で3パターンのインスタンスについて確認してみましたが。
- m5.largeはSPsの方が割引率が大
- m5.4xlargeはRIの方が割引率が大
- c5.largeはSPsの方が割引率が大
といったように、SLESの場合、RIやSPsのどちらかが一律割引率が高いといった事もなく、状況はインスタンスタイプごとに異なるようです。
総評
RIやSPsの購入によるコスト削減を狙う際に。
OSがSLESだとそもそもRIとSPsで割引り率が違うケースがあるといった所は見落としがちな所かと思います。
大量のインスタンスを対象にRI/SPsを購入する場合は、この割引率の差が効いてくるケースがもしかしたらあるかもしれません。
最終的には柔軟性の高さなどRI/SPsの違いをよく理解し、のちのちの事を考えて購入計画を立てたい所ではあります。
また価格情報は変更される可能性があるため、常に最新の価格情報を各自で確認して利用してください。
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